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フルメタル・アクションヒーローズ
エピローグ
第148話 いつも通りの朝
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成り兼ねないという危惧を感じているのである。

 果たして、自分は本当に道を踏み外さずに済むだろうか? 取り返しのつかない間違いは、侵さないのだろうか?
 そんな不安が尽きない彼は、目に映る世界だけでも晴れやかにしたい一心で、空を見上げる。

「――まーた、そんな元気のない目ぇしよる。シャキッとせんかい、男やろ!」
「あだっ……!」

 その度に、賀織は彼の背中を思い切り叩くのだ。弱気なところを見せまいとしても、彼女には全てお見通しなのである。
 何度隠そうとしても、付き合いの長さが災いしているのか、彼女にはまるで通じない。龍太自身が何に悩んでいるのかさえ、見透かしているかのように。
 もしかしたらタンスの裏に隠した、エロゲーのソフトもバレているのではないか。そう本人が勘繰ってしまうほど、彼女は常に龍太を見ているのだ。

 呆れるほどのお節介。そう言えなくもない彼女の行動ではあるものの、それが「救い」になっているのは本人が何よりも理解していた。
 悩んでいたら、ちょっと強引なくらいに背中を押してくれる。間違いなら、間違いと断じてくれる。身勝手な正義を行わせない「意志」を、彼女は――彼を愛する彼女達は、確かに持っているのだ。
 全ては、龍太自身を「ヒーロー」として完成させるために。

「ほら、早う行かんと先生にまた課題増やされるでっ! アタシら部室で待っとるけん、あんたもさっさと補習済まして、早う来ぃよ!」
「――お、おうっ!」

 やがて学校が視界に入ると、賀織は龍太の前に出て、小さな身体を一回転させて満面の笑みを浮かべる。これから先を楽しみに待つ、無邪気な子供のように。
 この笑顔に、ウジウジと悩む自分が圧倒されていく感覚を、龍太はいつも覚えさせられていた。同時に「勇気付けられている」、という後押しの気持ちも。

「さて……じゃ、行くか」

 大袈裟に手を振りながら、一足先に部室棟へ向かう賀織に手を振り、龍太は戦場となる教室を目指す。そこで「補習」という名の大敵と、今日も相対することになるのだ。

 新学期早々に設立された、「着鎧甲冑部」の仲間達。彼らに会う瞬間を、僅かでも早めるために。

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