エピローグ
第148話 いつも通りの朝
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る女心に気づいていない点を失念している彼には、正確な判断力があるとは言い切れないだろう。
結局、何が恥ずかしいのか理解が追いつかないまま、龍太は賀織によって遠回りのルートへ強制連行されるのであった。
さらにそこへ、自転車に乗った顔なじみが居合わせる。
「あれ、お巡りさんじゃん。パトロールお疲れ様」
「おはようっ、龍太君! 確か今日は補習の日だったかな、君も災難だねぇ」
「はは、なぁに。来月までの辛抱さ」
「へぇ、勉強嫌いの君にしては珍しく強気じゃない。にしても、相変わらずイチャイチャしてるねぇ! で、賀織ちゃんとはどこまでイッたの!? A!? B!? それともD!?」
「ちょ、いきなり何を言い出すんだよもー! 矢村もなんとか言ってやってくれ!」
巡査長に昇進し、テンションに磨きが掛かった近隣の警察官。その、ある意味では一切の容赦がない追及に、龍太は言葉を詰まらせてしまう。
そこで彼は、この「言葉による火災」を鎮火するべく賀織に話を振るのだが――
「……A、やで」
「えっ――えぇえぇえぇええッ!?」
「じゃ、じゃあ学校行くわ俺達ィィイィッ!」
――飛び出してきた「言葉」は、消火剤ではなく特大の燃料であった。俯き、頬を染め、恥ずかしげに呟く賀織の姿は、火に注がれる油と化す。
そして驚愕のあまり、自転車から転倒する警察官。その隙を突くように、龍太は賀織の手を引いてその場を走り去ったのだった。これ以上、ここに居ては胃が持たないと、本能が叫んでいたのだから。
……そんな、救芽井樋稟が転校する前と何も変わらない、穏やかな町。そんな松霧町の日曜日は、今日も平常運転であった。
しかし景色は同じであっても、龍太はこの町並みを、それまでと同一の感覚で見ることは出来なくなっていた。この町が、以前よりも平和である理由。それを知ってしまった今では。
「りゅ、龍太……どしたん? ぼんやりして」
「ん……いや、別に」
普段通りの道を行き、知り尽くした町並みを眺め、飽きる程に歩き慣れた角を曲がる。その一つ一つが、あの男に守られた世界なのだ。
瀧上凱樹。今は亡き、この町の英雄。
彼が死刑判決を言い渡され、迅速に刑が執行されたという知らせが届いてから、もう一週間は経っていた。
賀織や樋稟は事前にある程度覚悟を決めていたためか、それ程ショックを引きずることはなかったが――彼と少なからず繋がりを感じていた龍太は、彼の死をより重く受け止めていた。
彼がそうだったように、今度は自分がこの町を守ろうとしている。ということは、次は自分がああなるのではないだろうか? 龍太がそう考えざるを得ないのは、「怪物」同士である以上、他人事として見ることはできない、とする意識があるため。つまり、同類に
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