暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第147話 迫り来る終末
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
る。よりによって拳法を学ばせまいとしていたお前が、最高の素質を持っていたとは皮肉な話だが――お前が望む以上、俺も遠慮はしない。退院後が楽しみだな、龍太よ?」
「二十一世紀史上、最強の拳士を目指せるかもな? お兄ちゃん鼻が高いよ」

 そんな俺の動揺をよそに、兄貴はニヤニヤと楽しげに笑っている。ち、ちくしょう、この状況を楽しんでやがるッ!

 そして過酷な未来を憂い、頭を抱える俺を見つめていた兄貴は、誰にも聞かれないよう、静かに呟いていた。

「……だから、簡単には死ぬんじゃねぇぞ、龍太」

 その言葉を知る由は、俺にはない。

「あらあら、私達すっかりお邪魔虫になっちゃったわねぇ」
「……救芽井さん、頑張ってる……」
「あ、あわわわ……! きゅ、救芽井、大丈夫なんやろか……」
「――やりますわね。さすがは、同じ殿方を愛する女。それくらい言えなくては、張り合いがありませんわ」

 一方、他の女性陣はすっかり救芽井と母さんの対決に注目しており、完全に俺のことを失念していらっしゃる。

 伊葉さんや古我知さんも生暖かく見守るばかりだし……ああもう、なんで誰も助けてくれないんだッ!

 ――いや、今はそれどころじゃない。救芽井の本気を受けた母さんは、どう感じたのだろうか。どのような答えを、返すのだろうか……。

 母さんは穏やかに口元を緩めつつ、薄く開かれた瞳で救芽井を見つめている。今まで以上に険しいオーラを浴びせているようだが――救芽井も、引き下がる気配がない。

「……太ぁちゃんの名前はね。ママが付けたのよ」
「えっ……?」

 しかし、一触即発とも言うべきこの静寂を切り裂いたのは……この空気との関連が、まるで見出だせないような話題だった。俺の名前……?

「お父さんが護身術ってことで、亮ちゃんに拳法を教えはじめた頃よ。ママが、太ぁちゃんを授かったのは。……お父さんは私のためにお寺を出て、拳法漬けの生活を止めてくれたけど、『護身術』の範疇でも、お父さんの拳法指南は凄すぎたの。亮ちゃんも、最初は凄く嫌がってたわ」
「あ、あのお兄さんが……?」
「でもね。ママが太ぁちゃんを身篭ってから、亮ちゃん、変わったのよ。『ぼくが弟を守るんだ!』って、張り切っちゃってね。それでいつの間にか、お父さんみたいなめちゃくちゃ強い拳法家になっちゃって。強くなったのはいいけど、これじゃ寺を出る前と変わらないって、ママ、泣いちゃったんだ」
「そんな……」
「――だからお父さんと相談して、次に産まれて来る子供には、もう拳法は教えないことにしたのよ。太ぁちゃんの名前には、『拳法に頼らない生き方でも、太く、逞しく育つように』って願いが込もってるの。私達家族みんなで、太ぁちゃんを守るために」

 今までの話と、何の関係があるのか
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ