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フルメタル・アクションヒーローズ
第146話 進撃の母上
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 ――いや。あれ程のことをやってのける怪物であるからこそ、その力で町を救うことも出来た、ということなのかも知れない。自己を省みない怪物であるからこそ、彼の命を拾えた俺のように。
 やはり、俺と彼はどこまでも切り離せない存在らしい。国を滅ぼす怪物と同類のヒーローだなんて、お笑いにもならないけどな。

 だが、彼の全てを俺から否定することは許されない。彼が居てこその、俺達だったとするならば。

「ところで太ぁちゃん。あなた、着鎧甲冑を使ってこの町のヒーローを始めたみたいだけど……この先ずっと、救芽井エレクトロニクスで働いていくつもりなのかな?」
「えっ……?」
「もしそうなら、ママ、ちょっと悩んじゃうかなぁ。息子をこんな危ないことに巻き込ませる会社に入れるっていうのは、どーかなってママは思うのよね。お父さんにも亮ちゃんにも、太ぁちゃんに拳法は危ないから教えちゃダメ、って言ってたのに、結局こんなことになっちゃってるし」
「――すまん。久美。もう許してはくれないか。俺も龍亮も、昨日の十時間連続石畳正座で脚が辛いんだ」
「なにがあったんだよ!?」

 母さんは一貫してにこやかな表情を保ってはいるが、その口調はどこか刺々しい。親父もその大きな肩を震わせ、青ざめた様子で首を振っている。

「あっ……あの! りゅ、龍太君のお母様!」
「あら? 何かしら」

 すると、今まで俺達親子のやり取りを見守っていた救芽井が、怖ず怖ずと会話に入って来た。他人の家族だからか、どことなく遠慮がちだ。

「わわ、私、龍太君と懇意にさせて頂いております、救芽井樋稟という者です! この度は急なことで、何も用意できず恐縮なのですが、せめてご挨拶を――」
「そんなの気にしないでいいのよぉ、太ぁちゃんの大事なお友達なんだから。私のことは気にしなくていいから、太ぁちゃんとこれからも仲良くしてあげてね。変に怪我とかさせない程度に」

 救芽井はかつてない程に緊張した様子で、肩を震わせながら母さんに話し掛けている。そんな彼女に対する母さんの態度は、実に穏やかで――厳かだった。

 威圧感などカケラもないはずなのに、逆らえない雰囲気が全身から噴き出している。その得体の知れないオーラを浴び、救芽井は蛇に睨まれた蛙のように縮こまってしまった。

 考えてみれば、俺が着鎧甲冑に関わり、こうして戦いに介入していくことになったのは、救芽井との出会いがそもそものきっかけだったと言える。

 俺に拳法を習わせたくない――つまりは親父や兄貴のような、戦う力を持たせたくなかったという母さんとしては、俺が拳法を学ばないどころか修練を重ねるようになった「引き金」である彼女のことは、いささか気に食わないところがあるのかも知れない。

 確かに彼女と知り合い、古我知さんと戦う
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