第145話 お見舞いラッシュ
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お前が一番落ち着いてくれ。
「……い、一煉寺、さん……」
「な、なんでございましょう?」
ふと、四郷は今にも消えてしまいそうなか細い声で、俺の名を呼ぶ。今までの彼女の対応から考えて、恐らく「変に真に受けないでよ」などと、キツく釘を刺されるのだろう。
俺は迫り来る罵倒に備え、肩を竦める。そして、彼女の口から飛び出したのは――
「……ボ、ボクみたいなおばちゃんじゃ、嫌……?」
「え?」
――そんな俺の予想を、遥か斜め上に超えた言葉だった。
そして、俺を上目遣いで見つめる四郷の眼差しは、ほんのりと熱を帯びていた。歳を感じさせない、うぶなその雰囲気は、長い間幽閉されていたことに起因するのだろうか。
「……まぁ、その……あれだ。二十五歳なんてまだまだ若いうちだと思うし、気にすることないよ。だから――」
それならば。今まで封印されていた彼女の時間が、今になってようやく動き出したというのなら、
「――これからは俺と一緒に、歳を食おうぜ」
「ふぇっ……!?」
俺達が見届けるしかないだろう。彼女の人生は、やっと始まるのだと。
そうして彼女の小さな肩に手を置き、俺は口元を緩めた。「『高校生』の俺と一緒」と言えば、少なくとも「若さ」を保証することは出来る。
我ながら、上手い言い回しを考えたもんだ――と思っていたのだが。どうしたことだろう、四郷の顔が今までにないくらい赤い。
「はっ! ……ああぁん、あぁ……!」
しかも口からは涎が垂れ、目元は潤み、頬を汗が伝っている。加えて彼女らしからぬ、蕩けるような甘い声まで上がっており、明らかにさっきまでとは様子が違っていた。
なんだ……!? 四郷に一体何がッ!?
「四郷、どうした? 具合が悪いのか!?」
「や、だ、だめっ――ん、はぁあぁあっ!」
俺は焦る余り、彼女の両肩を思い切り掴んでしまう。すると彼女の身体は雷に打たれたように跳ね上がり、のけ反ってしまった。嬌声も、ますます色っぽくなっていく。
どう見ても普通じゃない。もしや、身体の変質が招いた新手の病気……!?
「た、大変だ鮎美さん! 四郷の様子が……!」
「……はぁ〜」
――え? な、なんなんだ、そのため息は。妹が大変なんだぞ……?
慌てて鮎美さんに声を掛けても、彼女は俯いてため息をつくばかり。しかも、なぜか周囲まで俺を冷たい目で見ている。
ど、どういうことなんだ? 俺が一体何をしたと……?
「龍太君……鮎子はね、生身に戻ったばかりでちょっとデリケートなの。『あなただけ』はむやみに触らない方がいいわ」
「そ、そうか、悪かった。でも、俺だけってのはどういう意味なんだ? それに、四郷のこの症状は一体……!?」
「しょ、症
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