第145話 お見舞いラッシュ
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我知さんの方――ではなく、窓の外へ向けた。まるで、ここに居ない誰かを見るように。
――え? もしかして、茂さん?
「あばばばばばッ!」
「ちょっ、剣一さん落ち着いて!」
同じことを、聞き耳を立てていた古我知さんも察したのだろう。頭を掻きむしり、奇声を上げてのたうちまわる彼を、救芽井が必死に宥めている。
……こりゃあ、なかなかハードな三角関係みたいだなぁ……。
鮎美さんはそんな古我知さんのところへ向か――うのかと思いきや、彼の肩を撫でるだけで素通りしてしまう。そして車椅子の取っ手に触れると、「ちょっとお借りするわね」と言いつつ、四郷をこちらへ連れて来てしまった。
「……お姉ちゃん、どういうつもり……?」
「まぁまぁ。――それでね、龍太君。鮎子のことなんだけど」
「お、おう」
お喋りの最中に連れて来られてしまい、四郷は少々むくれている――のだが、何故かしばしば口元が緩んでいる。そんな彼女の頭を撫で、鮎美さんは突然語気を強めた。
「鮎子の髪、ちょっと短くなってるでしょ? これ、脳移植の手術の時にちょっと髪を切る必要があったからなのよね。で、その時にこの娘の身体を調べ直していて、気づいたことがあったの」
「な、なに?」
「……十年前から肉体が変質しないように調整してたせいで、随分と体細胞の仕組みが変わっちゃってね。普通の人間より、成長が遅くなってることがわかったのよ。寿命や遺伝子が変わらないまま」
いきなり四郷の身体について話し始める鮎美さん。そんな体細胞だの遺伝子だの言い出したって、一介の高校生のオツムに入り切るわけないでしょうに。
……彼女は一体、何が言いたいのだろう。こんな難しい話をするくらいだから、もしかして凄く深刻な――
「どういうことか、わかる? 鮎子と結婚したら、一生若くて可愛いお嫁さんと生涯イチャイチャ出来るってことなのよッ!」
「な、なんだってー!?」
「はにゃあぁっ!?」
――事情なのかと思っていた次期が、俺にもありました。鮎美さんの爆弾発言に、俺は思わず目が点になってしまう。
それだけではない。向こうの女性陣は一人残らず驚愕の表情になり、四郷に至っては顔を真っ赤にして、普段じゃ絶対ありえない奇声を上げていた。
……なんだ「はにゃあぁ」って。お前そんなキャラじゃなかっただろ。
「ちょっ……ちょっと待ってください! そんなの断固として認めませんっ!」
「そ、そうやそうやッ! 龍太は、アタシと、あ、アタシと……」
「あ、鮎子ッ! 生身に戻ったばかりのあなたでは、龍太様のティルフィングには耐えられませんわッ! 気持ちはわかりますが、落ち着いて下さいましッ!」
鮎美さんの主張に対して、女性陣からはブーイングの嵐。久水……とにかく
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