暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第144話 確かな体温
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 黒いスーツに身を包む、二人の男性。古我知剣一と伊葉和雅は、この病室に来た時から、唖然とした表情で目を見開いていた。
 まぁ、当然だろう。部屋に入る前から飛び出してきた矢村と出くわし、何があったのかと駆け付けてみれば、救芽井と久水が膝を抱えて沈んでいたというのだから。

「あのキスのことか……確かに、樋稟ちゃんにはショックだったろうねぇ」
「うそ、うそよぉ……わた、私、龍太君のほっぺにまで、二回も、二回もしてあげたのにぃ……」
「……こうなれば、もっとスゴイことを、キスなんて目じゃないくらいなのを、りゅーたんとりゅーたんとりゅーたんと……」

 古我知さんの古傷をえぐるような指摘に、救芽井は涙目になっていた。一方、久水は何やら不穏な独り言を呪文のように繰り返している。

「矢村君、君もそろそろ落ち着いたらどうかね。一煉寺君も困っていよう」
「……」

 見兼ねた伊葉さんは、扉の傍で指を合わせてモジモジしている矢村に声を掛けている――が、当の彼女は頬を赤らめて俯くばかりで、全く反応を示さない。元総理大臣に話し掛けられてスルーとは……よっぽどキスの件が堪えてるらしいな。

 ……そこまで過剰に意識されると、こっちまでどうしようもなく恥ずかしくなるんだけど。それに、この先のことを考えたら、申し訳ない気持ちも出てきてしまう。
 俺がレスキューヒーローとして死ぬまで働くことになるのだとしたら、彼女の気持ちは――どうなるのだろうか。

「しかし、意外と元気じゃないか。あんな目に遭ったばかりだから、もっとナーバスになってるものかと思ってたんだけど」
「あんたと違ってバカだからな。そっちこそ、あれだけバラバラにされたってのにすっかり元通りかよ」
「元通りと言うより、開発時のデータを基に新しいパーツに取り替えたんだけどね。おかげで以前より性能アップさ。……それを誰かにぶつけることは、もうないだろうけどね」

 雰囲気を切り替えようと話題を振る古我知さんは、五体バラバラにされる前と変わらない佇まいだ。「新人類の身体」の技術を使ったボディというのは、俺が思っていた以上に簡単に替えが利くらしい。

 ――だが、彼の口調はどこと無く沈んだ色を湛えている。結果として復讐を果たしたことで、虚しさだけが残されたように。

「あんたが詳しく事情を話してくれたんだって? 世話掛けたな」
「あそこまで必死だった君の意見を、丸ごと蔑ろにしたら、後で何発殴られるかわかったものじゃないからね。……僕より、結果的に折れてくれた甲侍郎さんに礼を言えば? いつか、会いに行ってさ」
「……それもそうか。まぁ、あんたにも礼は言っとくよ」
「ふふ、どういたしまして」

 目を合わせず、俯きながら「礼」を呟く俺に対し、古我知さんは穏やかに微笑みながらこちら
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ