第144話 確かな体温
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、こんな歯痒い思いをしないように。救芽井を泣かせることにも、ならないように。
「古我知君の人生を狂わせたのも、私の責任――だな。凱樹君があのようになると予見していれば、全ては未然に防がれていた」
「和雅さん。それはもう、言わない約束でしょう。僕達は、それを償うために生きていくんだから」
「……ああ、そうだったな」
ふと、表情を曇らせた伊葉さんに向け、古我知さんが意味深な言葉を投げかけた。その声に、虚しさの色はない。やるべきことを見つけた、男の声だ。
「償う?」
「うん。来週、僕と伊葉さんは日本を出るんだ。瀧上凱樹が滅ぼした国の、復興のために」
「私が凱樹君の起こした事件を知り、退陣した時から十年間続けていたことでな。繋がりのあるNGOに呼び掛け、破壊された町の復興を行っていたのだ。来週から数年間、私はその視察を兼ねた支援活動に向かう。――それが唯一、私に出来る罪滅ぼしだからな」
「その国の指導者が生き延びていたから、政治体制は五年程前から回復してるんだけど、治安や経済はまだまだ不安定だからね。和雅さんのボディーガードとして、僕も同行するってことさ」
……瀧上が滅ぼした国、か。あの映像で見た惨劇以来、ずっと荒れ果てた砂漠のままなのかと思ってたけど、少し杞憂だったらしい。
あの国の人達は、まだ生きている。あんなことがあっても、強く生き続けてるんだ。
「そう、か……。なんだろうな、遠い国の――知らない国の話なのに、妙に勇気付けられちまう」
「同じ災厄とぶつかった者同士、だからかもね。僕も『瀧上凱樹を殺した罪』は、僕自身のように『彼に家族や未来を奪われた人達』のために働くことで清算するつもりだ。それを何年、何十年続ければ罪が消えるかはわからない。だけど、仮に消えない罪だとしても、僕には償い続ける義務がある」
恐らくはこの復興支援に、償い以上の生き甲斐を感じているのだろう。俺に共感を示す彼の口調は、まくし立てるように強い。
「甲侍郎も、救芽井エレクトロニクスの経営と『救済の龍勇者』の生産活動が軌道に乗れば、協力すると約束してくれたよ。……しかし、君にも随分と迷惑を掛けてしまったな、一煉寺君。まさか、この件にここまで君を巻き込んでしまうとは予想外だったよ。本来なら甲侍郎が突入した時点で、君を退避させるつもりだったからな……」
「ゴロマルさんもそうだけど、みんな過ぎたことを掘り返し過ぎだよ。予定には沿わなかったかも知れないけど、四郷は助かったんだから結果オーライってことでいいじゃないっすか。……そうだ。ゴロマルさんはもう成田に行っちまったのか? もうちょっと話したかったんだが」
「ゴロマ……? 稟吾郎丸氏のことか? 彼なら、もうこの町を出ておられる。飛行機の予定時刻が早まったらしくてな。確か、自分の代わり
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