第143話 大団円、と思いきや
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と、戦いが終わったのだと「実感」できるな。
そう、これはもう「錯覚」じゃない。俺達は生きて、勝ったんだ。
四郷姉妹を脅かした瀧上は、もういない。決してハッピーエンドではない――が、バッドエンドよりは遥かにマシな幕切れだろう。
――いや、待てよ。「俺達」と言うと、救芽井エレクトロニクス側の全員が入りそうだな。一緒に戦った救芽井や矢村ならまだしも、散々騙してくれた甲侍郎さんまで入れるのはちょっと癪に障る。今回の件に限っては。
それに、伊葉さんや古我知さんだって仲間には違いないはずだけど……遠い世界の「大人」に感じられる以上、「俺達」に含めるには、何か違う気がするんだよな。甲侍郎さんや古我知さん、伊葉さんを除いた「俺達」を指す言葉――か。
それならやっぱり、これがちょうどいいだろう。
「『着鎧甲冑部』の勝ち……って感じ、かな」
ついこの間、救芽井が話題に上げていたばかりだと言うのに、随分と懐かしい響きのように思えてしまう。
その単語を呟く俺の口元は、そんな滑稽な感覚を受けて、俺自身が気づかないうちに緩まっていた。
「……ん」
「……あ」
ふと、そんなことを考えていた時。
俺の膝の上で暴れている美少女三人衆の一人、矢村と視線が交わる。それ自体は偶然の出来事だったが、この次に起きる現象は「必然」そのものであった。
きめ細やかな小麦色の肌に囲まれた、薄い桜色の唇。そのみずみずしい色合いが目に留まる瞬間、「あのこと」が一瞬にしてフラッシュバックしたのだ。
みるみるうちに、俺自身の顔が熱くなっていくのがわかる。恐らく、向こうもアレを思い出したのだろう。彼女は久水をチョークスリーパーに捕えた格好のまま固まり、鼻先まで茹蛸のように真っ赤になっていた。
「え、えっと……」
「あぁ、あぁあ……! あ、あ、アレはッ! アレは吊橋効果やからッ! プラシーボ効果やからぁああぁあッ!」
「え!? ちょ、おいッ!?」
「なんですのあなた達、そんなに見つめ合って! ま、まさかこのワタクシを差し置いてッ……!?」
この空気に耐えられなくなったのか、彼女はチョークスリーパーを外し、涙目で病室から飛び出してしまった。わけのわからないことを叫びながら、かつてない程の全力疾走で。
……未だに口元に残っている、あの温もりの感覚。それが真実だったのかを改めて確かめるには、まだまだ早過ぎたのだろうか。
そして、彼女に置き去りにされた俺を待ち受けていたのは――
「龍太君。矢村さんと何があったのか――じっくり教えて貰えないかしら?」
「逃がしませんわよ、龍太様。こればっかりは絶対に」
――事情を察し、どす黒い笑みを浮かべる、美少女二人のツープラトン攻撃だった。
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