第143話 大団円、と思いきや
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は思わず声を荒げたが、彼女は全く動じた様子を見せなかった。
俺の考えを受け止めてくれた救芽井とは真逆のようにも見える――が、俺を案じての諌言であることには違いない。
確かに、幼なじみが自分の理想のためだとか何だとか言いながら、ホイホイと死地に向かおうとしているのなら、意地でも止めたくなるだろう。俺が逆の立場だったなら、締め上げてでも止めさせていた。
――そういう意味でも、彼女の言い分には筋が通っている。俺は今、自分がされたくないことを人にしたい、と言ったのだから。
「茂さんも、そんな意見か?」
「えぇ。『貴様が野望のために死ぬのは勝手だが、それで悲しむ人間のことを忘れようと言うのであれば、ワガハイは貴様の魂をも呪う』、と」
「そ、そんなっ! た、確かに龍太君に何かあったら嫌なのは私も一緒だけど……だからって、そこまで言わなくてもっ!」
「そそっ、そうやそうや! 助けられる人を助けたいってだけなんやから、べ、別にええやろっ!」
「いいんだ救芽井、矢村。久水達の言いたいことは何も間違ってなんかいない。俺は俺のしたいことのために、みんなに散々迷惑を掛けちまったんだからな」
久水兄妹の言うこともわかる。わかるが、俺は考えを変える気はない。
そんな胸中が透けて見えたのだろう。落ち着き払った俺の口調に、久水は眉を吊り上げた。
「そうおっしゃる割には、反省されているような佇まいではありませんわね」
「間違いだって言いたくない……って言っただろ?」
「口の減らない殿方ざます。そこまで強情なようでしたら――危険な出動が出来なくなるよう、足腰立たなくなるまで『搾り取る』しかありませんわねッ!」
「搾り取るって何を!?」
いきなりブラウスのボタンを外し、艶やかな胸元をあらわにする久水。その淫靡な笑みと真紅の唇が、この病室を一瞬にしてピンク色に叩き込む。――ホントにブレないな、こういうところは。
「さぁ、龍太様……覚悟なさって――あんっ!?」
「公序良俗違反で現行犯逮捕や、このエロリストッ!」
彼女はそのまま、軋む音を立ててベッドに上がり込み、こちらへ迫る――のだが、敢え無く矢村に取り押さえられてしまう。それでもめげずに、開かれた谷間から「りゅーたんとまぐわいたいで候」と達筆で書かれた訴状を取り出したが、それも救芽井に握り潰されてしまった。
「あぁっ! あんまりですわ悪代官様ッ!」
「誰が悪代官よッ!」
突然空気を掻き乱し、自分のペースに持っていこうとする久水。そんな彼女に対抗するように、救芽井と矢村はベッドの上に上がり込むと、壮絶な揉み合い合戦を始めてしまった。おい、俺は一応入院患者なんだぞ。静かにしてくれたまえよ。
……しかし、こうして以前のような騒ぎを見てる
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