第142話 二つの罪
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倍のペースで、外傷等の治療を行う機能を持っておる。言うなれば、壁に空いた穴を塞ぐための板を、早急に用意するためのシステムなんじゃよ」
「その塞いだ板……ってのが、この傷痕?」
「その通り。――じゃが、そうした急激な体細胞の変化は、その対象の肉体に異変をもたらすことになる。時間を掛けて少しずつ治療していく自然の摂理に、大きく逆らうことになるのじゃからな」
――「自然」に逆らう治療のせいで、肉体に影響……か。もし俺のイメージが的中したなら、今後は迂闊に町の市民プールに行けなくなりそうだぜ。
「その結果、急激な変化によって歪められた細胞は変質してしまう。そして、一度治療によって固まった部分は、容易に元に戻らなくなってしまうのじゃ。つまり、普通に時間を掛けて治せば消える傷痕も、メディックシステムに掛かると一生消えない傷として、死ぬまで残ることになってしまうんじゃよ」
……あぁ、やっぱりそうなのか。アディオス、市民プール。
ゴロマルさんの話を纏めるなら、メディックシステムを使ったせいで、俺の身体に一生モノの傷が付いてしまった――ってところだろう。二年前に付けられた脇腹の傷とは、今後も付き合っていく羽目になるらしい。
「脇腹の傷の方はそこまで目立たんから、教えんでも問題ないと思っておったんだが――さすがに今回のケースともなれば、もはや隠しようがないからの」
「それで大人しく白状したってか。俺としちゃあ、傷が消えないって話より内緒にされてた事の方がショックだぜ」
「すまんな……。樋稟に引き上げられた直後の君は、疲労状態や怪我の酷さが尋常ではなかったからの。ここの病院に搬送される前に、衰弱死してしまう可能性もあった。あの時のワシらが君を助けるには、メディックシステムに頼らざるを得なかったんじゃよ。銃創の完全な治療を半日で済ませられるメディックシステムでも、こうして意識を回復させられる段階まで十日も掛かってしまったくらいじゃからの」
そこまで言われると、俺からは強く文句が言えんな……。こんな厳つい傷と一生付き合うのは正直嫌だが、命あっての物種とも云う。ここは、十日も掛けて命を拾ってくれたゴロマルさん達に素直に感謝しておくべきだな。
「まぁ、いいか。死ぬよりはマシな方だし。おかげさまで今日を生きてるんだから、サンキューってことで」
そう言いつつそっぽを向いた先では、既に夜の帳が降りていた。窓に映る俺の顔が、夕暮れより鮮明になっている。
そこに映り込んだ左目の瞼には、眼球を跨ぐように縦一直線の傷痕が残されていた。このダサカッコイイ傷とも、長く付き合うことになりそうだ。
「……そうか。夜も遅いし、そろそろワシも帰らねばならん頃合いだが――最後にこれだけは言わせて欲しい。この戦いに勝ってくれて……本当にあ
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