第142話 二つの罪
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掛けちまってたみたいだな。彼女達には、明日ちゃんと謝った方がいいだろう。
「……さて、龍太君。今さらではあるが、ワシは――ワシらには、君に謝らなくてはならんことがあるのう」
「謝る?」
すると、ゴロマルさんは突然人が変わったように真剣な面持ちになり、真っ向から俺の瞳を見据えた。申し訳ない気持ちは強く――それでも、伝えなければならない。そんな、悲壮な覚悟を讃えた眼差しだ。
……言いたいことはわかる。彼らにそのくらいの良心があると見込めなければ、俺は救芽井家を信用できなくなっていただろう。
皆まで言わせるようなことではないかも知れないが、ブチまけて楽になる時だってある。ここは、素直に聞き手に徹するべきだな。
「ワシらの罪は、二つ。まずは、君をこの血生臭い陰謀に巻き込み、危険な戦いに誘ってしまったこと。救芽井エレクトロニクス――ひいては、その力で救えるであろう未来の命のためとは言え、君をここまで追い詰める事態を招いてしまったことに、心からお詫びを申し上げたい。ワシ一人の頭で足りるとは思ってはおらんが……この謝罪は、甲侍郎を含めた救芽井家全員の総意じゃ」
紡がれていく言葉。深々と下げられる頭。それら全てが、俺の予想を映像化しているようだった。
まぁ、余計な茶々を入れといて一言の謝罪もなしじゃ、事態が悪化したせいで首をハネられた四郷が可哀相だもんな。俺もプンスカしたくなるし。
「……ホンットに今さらだな。確かに騙されたのは心外だったが、四郷を助けるために瀧上と戦うことに決めたのは、俺個人が勝手に決めてたことだ。結果的にあの娘は助かったんだから、結果オーライってことにしとこうぜ。初めからあんた達の作戦を知っていようがいまいが、俺のやりたいことは変わらなかっただろうよ」
自分より遥かに長生きしてる、人生の大先輩に頭を下げられては、こっちの心中も穏やかではいられない。俺は頭を掻きむしりながら、若干荒い口調で彼の言い分を取り下げた。
本来なら年上に取るべき態度じゃないだろうが、こうも真剣に謝られては、こっちも対応に困ってしまうというものだ。
「――怒っては、おらんのか?」
「怒ってるさ。でも、恨んだりはしない。そんだけだ」
コンペティションのために勉強したり腹括ったりしてた身としては、確かに利用されたのはショックだ。だが、瀧上の危うさを鑑みれば、そういう作戦に出ようと考えるのは……わからなくもない。
だから、いつまでもこの件を引きずって、彼らを責めたって仕方ないだろう。救芽井家をこき下ろすなら、彼らの主義を超えるレスキューヒーローになってからの話だ。
――それにしても、罪が二つという言葉が気にかかるな。てっきり俺は騙したことくらいだと思っていたんだが、他にも何かあるのか?
「
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