第142話 二つの罪
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で広まっていたようだが……現場で救芽井と矢村が周りに呼び掛けてくれなかったら、きっとその場で瀧上は「処分」されていたのだろうな。
そんな彼女達の大活躍は、できることなら素直に称えたい。――だが、辛くはなかったのだろうか。周りに抗い、自分の主張を通すことは。
自分が原因で、彼女らをそんな道に連れ込んでしまったのかと思うと、申し訳ない気持ちも出てきてしまう。……救芽井、矢村。俺達を助けてくれたのは、本当にありがたい。でも、お前らは――それでもよかったのか?
レスキューヒーローを騙っていながら、救芽井にレスキューされなくては目的を果たせず、矢村が居なければ四郷も助けられなかった俺が、偉そうな口を利けるわけはないのだが……それでも、彼女達のことを案じずには居られない。
「甲侍郎も、『初めて娘に反抗された』と戸惑っておったよ。生かしておいては危険、というのがあやつの見解じゃったからの。そこで甲侍郎と樋稟が対立しかけた……のじゃが、久水兄妹が仲裁に入って『瀧上凱樹が真に死すべきならば、法の裁きでも殺せるはず』と主張しての。結局、瀧上凱樹のその場での抹殺は中止となり、更に剣一の話を経て、正式な裁判で決着を付ける――という結論に至ったわけじゃ。世間には公表できんから報道規制が敷かれるし、どのみちジェノサイド罪により即刻死刑となるじゃろうがの」
「そうか……どのみち、瀧上が殺されるってオチには変わりないのに……手間を掛けさせちまったな」
「――甲侍郎は、お前さんの考えは甘い、時には捨てねばならない命だってある、と断じておった。そのままでは、いつか樋稟も自分自身も不幸にしてしまう、とも。世の中、綺麗事ばかりで回っておるわけではない。ワシも和雅も鮎美君も、お前さんのやり方には賛同しかねたよ」
……やはり、総スカンは避けられなかったらしい。あれだけ瀧上を案じていたはずの所長さんまでもが、最終的には彼の生存を望まなくなっていたのだ。初めから取っ捕まえて潰す気満々だった甲侍郎さんからすれば、俺の思考回路など狂気にしか映るまい。
ゴロマルさんの言う通り、瀧上は命を懸けてまで助けるべき存在ではない。身も心も「怪物」になろうと、一応は生きている人間である以上、絶対に見捨てまいとした俺の考えは、端から見れば危険そのものだろう。
「瀧上の処刑にちゃんとした段取りを組むのは、あくまで俺のワガママに付き合うため……ってことか?」
「そういうことになろう。誰もこの裁判に必要性など見出だしてはおらん。お前さんの矜持を尊重した樋稟も、それはわかっておった。それでもあの娘は、お前さんの気持ちを守ろうとしておったよ。余計な命まで拾ってきたとは言え、見捨てられかけた鮎子君を生還に導いたのじゃからな」
「四郷……四郷は、これからどうなるんだ? 所長さんは?」
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