第142話 二つの罪
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ておる」
絶対に忘れてはならない、彼らの命運。その超重要事項を問い詰める俺に対し、ゴロマルさんはなだめるような口調で語りかけて来る。
そして、彼の言葉を聞いた瞬間、全身の力が骨の髄から抜けていく感覚に見舞われた。そうか、みんな……生きていたんだな。――瀧上も。
「矢村ちゃんが鮎子君を連れて、螺旋階段を登りきった後のことじゃ。鮎美君が脱出時に回収していた『鮎子君の生身』に、彼女の脳髄を戻すことが決まったんじゃよ。『もうここまで来てしまったら、この娘を縛る意味もない』、とな」
「そっか……! 矢村の奴、間に合ったんだなっ! じゃあ、四郷は人間に戻れるってことか!?」
「うむ。一度肉体から離れていた脳を、培養液で保存されていた肉体に帰す手術は、やはり簡単ではなかったようじゃが――今では意識も安定しているようじゃ。今、お前さんが目覚めたと知ったら、何はさておき飛び出して来れるんじゃないかの?」
何はさておき飛び出す――か。そんなに元気になれたのかなぁ、あの娘。命があるだけでも万々歳ではあるが、ちょっと心配かな。
「そして、剣一と瀧上凱樹じゃが……剣一の方は、生命維持装置の充電が辛うじて間に合ってな。電気代は掛かったが、今は元気にしておる。明日には、和雅の奴と一緒に様子を見に来るらしいぞ」
「よかった……。あの人には、借りがあるもんな。生きて貰わなきゃ困る。――それで、瀧上はどうなんだ?」
「……」
俺の問い掛けに、ゴロマルさんは一度口ごもる。相手が相手なだけに、気軽には話せない事柄なのだろう。
――わかっている。あれだけのことをしでかして、今回の作戦では抹殺することも考えられていた彼を、「生け捕り」に近い形で、命を懸けてまで連れて来たのだ。その訳を問われる瞬間も近いだろう。
殺すべき奴を、生かして連れて来た。そんな俺を、周りのみんなはどのように見ていたのだろうか。
「……一応、今は脳髄を培養液に浸した状態で、わしの管轄の研究所に保管しておる。法で裁いた上で、改めて殺すためにな」
「法で、殺す……か」
「お前さんが望んだのじゃろう? 息を吹き返した剣一から聞いておる。もっともそれ以前に、出口直前で力尽きたお前さん達を連れ出した樋稟が、『龍太君が命懸けで連れ出したんだから、殺さないで』と、瀧上の抹殺を止めさせたおかげでもあるじゃろうがの」
「救芽井が、そんなことを……。やっぱり、あの娘が助けてくれてたんだな」
「――少なくともあの娘は、お前さんの願いを理解しておったよ。レスキューヒーローを生む側の人間として、樋稟も瀧上の処遇には思うところがあったらしいの。矢村ちゃんも躊躇はしておったが、最終的には樋稟の味方をしておった」
どうやら詳しい事情は、俺が話すまでもなく、生き返った古我知さんのツテ
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