第140話 魂に愛がなければ
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義務とした、レスキューヒーローの本懐すらも揺るがしかねない、最低最悪のエゴイズム。
仮にここまでやって成功したとしても、瀧上が改心する望みなんてないし、したとしても遅すぎる。おまけに、俺のやったことも「余計なお世話」になり、褒められるどころか責められるかも知れない。
百害あって、一利なし。俺の行為は、まさにその通りだろう。少なくとも、まともな神経で考えるならば。
――そんな世の道理に逆らって粋がる、中二病全開な自分の思考回路には、呆れて言葉も出ない。だが……嫌いには、なりきれなかった。
「ふぅ、ぐッ……うぅゥッ……!」
見捨ててはいけない。自分の判断で彼まで見捨てたら、いつか救うべき人も見殺しにしてしまう気がする。
……そう思ってしまう自分を、間違いだと断じきれなかったからだ。
生かしちゃいけない人を殺すのは、正しい。確かに、そこに間違いはない。俺も、瀧上を生かしておくわけには行かないと思う。
じゃあ、その正しさを決めるのは誰だ? そこにいる人間だけで、本当に全て解決してしまっても構わないのか?
レスキューヒーローが……誰かの命を救うために来ているヒーローが、その酌量を自分で決めて、切り捨てていいのか? ……違う気がするんだ、俺は。
善悪を決めるのはきっと、もっとたくさんの――そう、色んな考えを持ってる人達なんだ。違う考えを持った人が話し合って、一生懸命悩み抜いて、何が正しいかを決める。
それが「正義の味方」の仕事なら、それは「怪物」の俺が気にしていいことじゃない。何が正しいかを決めるのは、俺の役目じゃないんだ。
――だから俺は、誰でも助ける。魔王でも悪魔でも、死にかけてるなら助ける。善悪の定義も世の道理も、知ったことか。
それが正しいかどうかは、他のみんなに任せればいい。後で何を言われようと、俺は俺にしかなれない「怪物」になるだけだ。
……ごめんな、伊葉さん。期待に、応えられなくて。やっぱりあんたを裏切ったって意味じゃ、俺も瀧上と同類だな。
そうして、胸中で自分の気持ちに踏ん切りを付けている間に、俺の視界へ白銀の鎧が入り込んで来る。生気を失った青白い素顔と、輝きを失った左胸の球体が、命の危機を訴えているようだった。
「ふぅ、くっ……おおぉッ!」
起き上がって瀧上の首をくわえて、歩き出してから約一分程度。古我知さんの傍にたどり着くのに掛けた時間は、恐らくその程度だったのだろう。落石や浸水に、さほど変化がないところを見る限りでは。
――だが、失った体力は大きい。左腕に滲みつつある激痛に意識を奪われかけている上、気合いを振り絞り、残った右腕で古我知さんの胴体を抱えた瞬間、全身に十倍の重力が掛かるような錯覚に陥ってしまったのだ。
「お、もッ……!?
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