第139話 俺と貴様の最終決戦
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は望めるはずもない。
必殺の拳が外れた瞬間、俺の左腕から感覚が失われる。――いや、正確は腕に迸る「冷たさ」のあまり、痛覚すらも麻痺してしまっているのだろう。僅かに視線を横に移すと、そこには「当然の結果」が待ち受けていた。
人間の関節ではありえない方向にひしゃげた左腕。スーツの色か血の色なのかはわからないが、もはや使い物にならないことだけは確かだ。その事実に念を押すかのように、肘関節の辺りからは白い突起物が飛び出している。
……掠っただけで生身の骨までめちゃくちゃにするとは、さすがだ。左腕全体に広がる、この神経まで凍るような「冷たさ」がなければ、今頃は失神していたに違いない。
――だが、命まで奪えなかったのが運の尽きだったな。
「ダッ……ァァアァアアッ!」
他人の命を吸い尽くし、その上で自分の命まで使い潰す。そうして残された最後の力が、右の手刀となって瀧上の首を貫いていった。
血しぶきの如く火花が飛び散り、鋼鉄の巨体が激しい痙攣を起こす。消えかけた命の灯が、最期に美しく燃え上がるように。
そんな輝きを放った炎が迎える結末というのは――相場が決まっているらしい。
「ゴガォッ……ゴ……オ、ォ……」
はじめは抵抗するように身じろぎしていた鉄人の身体は、遂にその活動を停止する。マリオネットの糸が――切れたのだろう。
鉄兜の凶眼は、その妖しい輝きを失い……俺の足元へと力無く落ちていく。崩れるように仰向けに倒れていく、首なしの巨体と共に。
「ハァッ、ハァッ……ハァ……」
おかしな方向に折れ曲がったまま、だらりと垂れ下がっている左腕を覆う、強烈な冷感。その奇妙な感覚は疲労にも強い影響を与えており、俺の呼吸をより一層荒くさせていた。
そんな状況でも、俺は可能な限り冷静に周囲を見渡し――その時になって、ようやく理解した。
たった今、ここに存在することを許された「狂気」は、この俺に決まったのだと。
そして――
「……勝った、勝ったよ……四郷。矢村。所長さん。……救芽井」
――腕が痛いからなのか。嬉しいからなのか。
地面に転がる、赤髪の生首を見つめていた俺の頬には、スーツ内よりも熱い雫が撫でるように伝っていた。
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