第139話 俺と貴様の最終決戦
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そんな俺の視線を受けた瀧上は、首から手を離すと、そこから火花を飛び散らせながら両拳を静かに構えた。
どうやら、自分の首にばかり構っている場合じゃないと、気配で悟ったらしい。意識障害に陥り、「新人類の身体」にとっての死の淵に立たされながらも、注意すべきものを見誤らない辺りはさすがと言うべきか。
「フゥーッ、フゥー……!」
「……ゴォ、ゴォーッ、コォーッ……!」
少し踏み込めば、突きも蹴りも簡単に届く間合い――「一足一拳」の距離の中で、俺達の動きは再び静寂に包まれる。
生か死か。
勝者となるか、敗者となるか。
どちらに、どのような結果がもたらされるのか。
その答えを出すためだけに、俺達はここに居る。
どちらの狂気が、この沈み行く空間の中で存在を許されるのか。全ては、その裁断のために。
そんな俺達を包囲しているのは……グランドホールに轟き続ける、海水の濁流と落石のシンフォニー。そのけたたましい音色は、引っ切り無しにこの世界を揺るがし続けていた。
だが、俺達がそのような瓦解のオーケストラに気を取られることはない。
どれだけ近くに瓦礫が落ちようが、どれだけ足元を海水が浸そうが、今の俺達には無縁な話だ。
俺の目では瀧上しか見えないし、瀧上の目でも俺しか見えていない。互いの視線に、割って入る何かなど、ありえないのだ。
だからこそ。邪魔が許されない世界の中に居るからこそ。
俺達の視界を、小さな瓦礫が垂直に横切った瞬間。俺達は、俺達だけの世界が砕け散る錯覚に陥り――
「……ウォアァアアタァアァッ!」
「……ガォアァアァアァアァアッ!」
――均衡を保っていた静寂すらも、打ち砕いてしまったのだ。高尚に例えるならば……聖域を荒らされ、怒り狂う守護神のように。
互いに踏み込む瞬間、周囲の瓦礫が逃げるように舞い散り、水しぶきが上がる。それら全てを突き抜けて、瀧上の剛拳が槍の如く襲い掛かった。
今までのどんなパンチよりも重く――速い。風を切る轟音が、それを物語っている。
間合いを詰める俺に対し、迎撃するように放たれたその一発は、こちらの顔面を確実に捉えていた。
まともに喰らえば、頭蓋骨が砕かれるどころではない。頭そのものが、消えてなくなってしまうだろう。
そんな結末だけは、避けねばならない。身体のどこかを、犠牲にしようとも。
そして、そのための生贄に……俺は左腕を選んだのだった。
瀧上の鉄拳が俺の顔面を消し去る直前、その身代わりになるように左の外腕刀が飛び出していく。この剛拳の流れを、掠めるように。
本来ならばこれは、相手の拳を受け流し、いなすための技。しかし、この有り余る筋肉では、そのような精度
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