第139話 俺と貴様の最終決戦
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掛かるようだ。全身に走るこの激痛は、瀧上の攻撃によるものだけじゃない。
与えられた「力」に「責任」が伴うように、この強すぎるパワーもまた、相応のリスクを兼ね備えていたのだ。それはただ動きが鈍重になるだけでなく、筋肉の重さゆえに疲労が早まるという側面も持っていたらしい。
「あづッ――あ、あぎぃぃ、あぁあァッ……!」
しかも、パワーに耐え兼ねたスーツ内の電線が切れ、そこから漏れた電熱が俺の肉体に根性焼きをかますというおまけ付き。今が戦闘中じゃなく、アドレナリンが鎮まっている状態だったなら、痛みと熱さで発狂していただろうな。
そんな俺に止めを刺さんとする瀧上の足音が、地震となって徐々に近づいて来る。震える左手で辛うじて身を起こし、身体を返して見れば――
「ゴォ、ゥ、ォオオ……」
――無彩色の巨体が、その身を映した影で俺の全身を覆い尽くしているのがわかった。今度こそ終わらせようと、左の拳を振り上げていることも。
「……ふぅッ、く、うぐッ……!」
こんな危機的状況なら前にもあったし、その都度、奇跡の逆転劇が起きてくれていた。周りに、助けてくれる誰かが居たからだ。
しかし、もうそんなカードは残っていない。外部から助けが入る要素は、もうどこにもないのだ。
――この場に居て、意識を持って動いているのは、俺達二人だけなのだから。囮を引き受けた矢村も、バッテリーをくれた古我知さんも、もうここには居ない。
振るわれた拳が、俺の頭を打ち砕いて脳みそをぶちまける。そんな夢のない結末が、簡単に訪れてしまうのだ。
彼の鉄槌が、望まれるままに振り下ろされてしまうだけで。
夢も希望も味気もない、口先ばかりのヒーローの最期。そんな幕引きでしか自分の死を表現出来ない事実に、自嘲の笑みが浮かびかける。
その感情が、仮面の奥の口元から表出しようとしていた、その時。
「ゴォッ……ガオォッ!?」
悪運の女神が、再三舞い降りたのだった。
「……ッ!?」
「ゴガォッ! ア、ォ、アゥオオァ……!」
何が起きたのかと目を見張る俺を余所に、瀧上は自分の首を絞めるような仕種と共に数歩後ろへ下がると、突然唸り出していた。喉に何かを詰まらせてのたうちまわるような、得体の知れない挙動の数々。
「あッ……!」
その実態は、巨大な掌で覆われた「首」そのものに隠れていたのだ。図太い指の隙間から飛び出す火花を見て、俺は思わず声を上げる。
「新人類の身体」にとっての命綱である、オリジナルの脳髄を詰めた頭部。その繋ぎ目である首に、深刻な損傷が生じているのだ。
元々、爆発のダメージで装甲が弱まっていたところへ、拳や膝蹴りなどを立て続けに浴びたせいだろうか。――いや、それだけじゃない。
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