第138話 貴様にだけは
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いく。強すぎる「力」が周囲にまで影響を及ぼしているのか、俺の足元の小さな瓦礫がポルターガイストの如く小刻みに震え、舞い上がっていった。
今にして思えば、この溢れ出る「力」こそが、俺が立ち上がれた一番の要因なのかも知れない。古我知さんの「命」を奪って手に入れた、許されないはずの、この「力」が。
「ぐ、おぅ、あッ……お、アァアァアアォオオォッ!」
俺の全身を飲み込む、触れるもの全てを吹き飛ばしてしまいそうな蒼い「力」。
その膨らみが最大限に達した時。俺は「人」ならざる雄叫びを上げ、自分の身体の全てを、その煌めきの中に封じ込めてしまった。浮き上がっていた瓦礫の全てを、弾き飛ばしながら。
――やはり、生命維持装置の電力というものは、「腕輪型着鎧装置」の機能を狂わせてしまう程のパワーだったらしい。
発光が僅かに大人しいものになり、俺の姿が浸水してきた海面に映るようになった頃には、既に着鎧が完了していたのである。
そう、お約束の「着鎧甲冑」というコールを待たずして。
しかも、そこに映っていた俺の姿は、本来のものとはどこか違っていた。……普段より、筋肉質になっているのだ。
急激に流し込まれた強すぎる電力が、バッテリーを過剰に稼動させたせいで、スーツ内の人工筋肉が肥大化したのかも知れない。全身に漲るこの「力」を肌で感じていれば、この変化が見た目だけじゃないことはすぐにわかる。
――そんな俺の変わりようには、正気を失っている瀧上さんもさすがに無視できなかったらしい。生命維持装置の補助を失い、気絶している古我知さんから目を離すと、直ぐさまこちらへ向き直った。
「ゴ、ゥオ、ガッ……!」
「……貴様も俺も、人を巻き込んで傷付けてるって意味じゃ同じなんだろうな」
同族嫌悪、という奴なのだろう。気がつけば、俺の彼に対する口調は以前より刺々しいものになっていた。
正常な意識を失いつつも、俺達を殺すという執念だけで戦い続ける灰色の鉄人。対しては、人の命を奪って人を救おうとする、歪な正義の味方。
……どっちが勝っても、ロクなことになる気がしないな。
だけど、俺はそれでも――
「けど、俺はそのままでいいとは思わない」
――貴様みたいに奪うだけの「怪物」にだけは、なりたくないんだよ。
「さぁ、こちとら拾わなきゃならない『命』を三つも抱えてんだ。さっさと済ましちまおうぜ、『瀧上』」
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