第138話 貴様にだけは
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が、バッテリー切れ「だった」これを届けた理由。それは、俺の想いを汲んでのことだったのだろうか。それとも、「コイツだけはなんとしても殺してくれ」という、喜ばしくない期待ゆえ、なのだろうか。
いずれにせよ、今は「死」を受け入れる以外の選択肢を、望むべきだ。
生命維持装置は、自分の心臓の働きを補強するためのもの。彼は、確かにそう言っていた。
なら、それが止まったとしても、すぐに死に至るわけじゃない。停止した心臓が、電気ショックで鼓動を再開できるように。
なら、命の灯が消えかけている彼に対し、「力」を与えられた俺が何をするべきか。――なんて、考えるまでもないか。
「ゴッ……。ゴォ、ゴォオ、オ……」
弱点の頭にピンポイントで攻撃を当てられたことで、抹殺対象が変わったらしい。瀧上さんは俺に対する興味を失ったように、虫の息の古我知さんへ向かおうとしている。
「――待てよ。古我知さんなら、そっちにはいないぞ」
そして。
俺に向け続けていた微笑が消え。
白い顔に生気がなくなり。
残された銀色の右腕が、力無く倒れ伏し。
蒼い光球が、その光を完全に燃やし尽くした時。
その光景に突き動かされるように、俺は立ち上がっていた。今まで、痛みや恐怖で身動き一つ取れなかったのが、嘘のように。
瀧上さんを助ける。そんな都合のいい理想に巻き込んで、彼を瀕死に追いやった自身に対する憤怒か。「力」を預かる者としての義務感か。それとも、自身の本懐を発揮できると喜ぶ、「怪物」ならではの狂気なのか。
この沸き上がる力の理由。その候補は、言葉で語るには余りにも多過ぎる。
それに、今は――そんなことを考えていられる余裕もない。
迅速に、レスキューヒーローとしての責務を果たす。今考えることは、それだけで十分だ。……いや、今の俺にはもう、それだけしか考えられない。
立つ瞬間に右腕に嵌めた、赤い腕輪。そこからは今、見慣れない青白い電光がほとばしり続けている。
溢れ出る「力」の奔流。それを形容するかのような輝きが、絶えずこの空間に閃いていた。
――どうやら、古我知さんがこの腕輪に与えていたエネルギーは、腕輪自体のキャパシティを超える程の量だったらしい。彼も必死過ぎて、そこのところは上手く調整できなかったのだろう。
R型のバッテリーを、短時間で吸い尽くすほどの「食いしん坊」な生命維持装置。その総てを腕輪に注ぎ込むと、これほどのエネルギー過多を引き起こすのか……。
「うっ、ぐ、あ……おおぉッ……!」
右腕を伝い、全身に流れる「力」の電流。その勢いに飲み込まれ、俺は思わずうめき声を上げてしまった。
腕輪から漏洩し続けている蒼いエネルギーは、さらに激しさを増して
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