暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第138話 貴様にだけは
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が、バッテリー切れ「だった」これを届けた理由。それは、俺の想いを汲んでのことだったのだろうか。それとも、「コイツだけはなんとしても殺してくれ」という、喜ばしくない期待ゆえ、なのだろうか。

 いずれにせよ、今は「死」を受け入れる以外の選択肢を、望むべきだ。

 生命維持装置は、自分の心臓の働きを補強するためのもの。彼は、確かにそう言っていた。
 なら、それが止まったとしても、すぐに死に至るわけじゃない。停止した心臓が、電気ショックで鼓動を再開できるように。

 なら、命の灯が消えかけている彼に対し、「力」を与えられた俺が何をするべきか。――なんて、考えるまでもないか。

「ゴッ……。ゴォ、ゴォオ、オ……」

 弱点の頭にピンポイントで攻撃を当てられたことで、抹殺対象が変わったらしい。瀧上さんは俺に対する興味を失ったように、虫の息の古我知さんへ向かおうとしている。

「――待てよ。古我知さんなら、そっちにはいないぞ」

 そして。

 俺に向け続けていた微笑が消え。

 白い顔に生気がなくなり。

 残された銀色の右腕が、力無く倒れ伏し。

 蒼い光球が、その光を完全に燃やし尽くした時。

 その光景に突き動かされるように、俺は立ち上がっていた。今まで、痛みや恐怖で身動き一つ取れなかったのが、嘘のように。

 瀧上さんを助ける。そんな都合のいい理想に巻き込んで、彼を瀕死に追いやった自身に対する憤怒か。「力」を預かる者としての義務感か。それとも、自身の本懐を発揮できると喜ぶ、「怪物」ならではの狂気なのか。
 この沸き上がる力の理由。その候補は、言葉で語るには余りにも多過ぎる。

 それに、今は――そんなことを考えていられる余裕もない。
 迅速に、レスキューヒーローとしての責務を果たす。今考えることは、それだけで十分だ。……いや、今の俺にはもう、それだけしか考えられない。

 立つ瞬間に右腕に嵌めた、赤い腕輪。そこからは今、見慣れない青白い電光がほとばしり続けている。
 溢れ出る「力」の奔流。それを形容するかのような輝きが、絶えずこの空間に閃いていた。

 ――どうやら、古我知さんがこの腕輪に与えていたエネルギーは、腕輪自体のキャパシティを超える程の量だったらしい。彼も必死過ぎて、そこのところは上手く調整できなかったのだろう。

 R型のバッテリーを、短時間で吸い尽くすほどの「食いしん坊」な生命維持装置。その総てを腕輪に注ぎ込むと、これほどのエネルギー過多を引き起こすのか……。

「うっ、ぐ、あ……おおぉッ……!」

 右腕を伝い、全身に流れる「力」の電流。その勢いに飲み込まれ、俺は思わずうめき声を上げてしまった。
 腕輪から漏洩し続けている蒼いエネルギーは、さらに激しさを増して
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ