第138話 貴様にだけは
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俺を見下ろし、ゆっくりと拳を振り上げる。瀧上さんはそんなことが出来る間合いまで、たどり着いてしまったのだから。
古我知さんの手足を破壊したその拳で、俺の命を絶とうというのだろう。それは、避けようのない現実だ。もう受け入れるしかない、というのはわかる。
――だが、十七年の人生を締め括る最期の光景があんたってのは、気に入らねぇ。あんたの面を見て死ぬぐらいなら、古我知さんの方がまだマシだ。
そんな往生際の悪い動機で、眼前の鉄人を視界から外した俺は、手足をもがれた白銀の騎士に視線を移した。
「……んッ!?」
そこで見た光景に、目を見張ることになるとは思いもよらずに。
――瓦礫と一緒に転がっているガラクタのように、傷だらけになりながら横たわっている機械仕掛けの男。
その白い胸の奥で、鈍く光る蒼い球体には、見覚えがある。
そして、そこから幾つもの管に繋がれているのは――俺の「腕輪型着鎧装置」。どうやら、腕輪は彼がいる辺りまで吹っ飛ばされていたらしい。
最初に彼が転がっていた場所とは少し離れたところに居る辺り、恐らく腕輪を拾うために、残った右腕一本で這いずり回っていたのだろう。命を繋ぐためとは言え、この状況で大した根性だな。
それにしても、なんであの人は……あんなに笑っていられるんだ? 俺の腕輪から電力を補充したって、その身体でどうにか出来るとは思えない。
こちらに向けられている彼の微笑みは、子供を元気付ける大人のような頼もしさが滲み出ている。……が、この状況じゃそんな顔されたって、どうしようもないだろうが。
「……え?」
その時。
俺は、蒼い光球の異変に目を奪われた。
光が……暗くなっていく。点滅していく。まるで、使い果たされた電球のように。
どういうことなんだ。あのコードに繋いだら、腕輪から電力を補充出来るはずじゃ――!?
――ちょっと待て。おかしいぞ。
なんでわざわざ俺の腕輪を繋ぐ意味がある? 俺の腕輪には、ハナから補充出来るバッテリーが「無い」んだぞ!?
意識が曖昧なせいで、そんな当たり前のことに気づかなかった俺も大概だが……古我知さん、あんた何を考えてやがる!?
まさか、まさかとは思うが、あんたはッ……! あんたという人はッ……!
「……クッ!」
――そんな俺の予測に沿うかのように、古我知さんは微笑からキッと真剣な顔に切り替えつつ、右腕で赤い腕輪を瀧上さんの頭に投げつける。
その頃には――胸の蒼い輝きは、九分九厘その煌めきを失っていた。
その状況が意味するものを、憔悴した彼の表情が物語っている。
激しい金属音と共に鉄人の頭に激突した腕輪は、持ち主である俺の目の前にガシャリと落ちる。
……彼
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