第137話 それは歪な正義の味方
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
していながら、何もできなかった自分を見つめる度に、そう思わずにはいられない。
――だからもう、独善でもいい。瀧上さんと同じでも構わない。
俺がヒーローでも正義の味方でもない「怪物」だと言うなら……せめて、俺は「どんな奴も助けに行ける怪物」になりたい。
それで皆に心配を掛けていくのなら――心配するのがバカバカしくなるくらいの、世界最強の「怪物」になってやる。
呆れるくらい強くて、レスキューバカな、「怪物」に。
そのためにも、俺はここで帰るわけには行かないんだよ。古我知さん。
……すまねぇな。あれこれ気を遣わせちまったのに。
肩に置かれた銀色の篭手を優しく外し、俺は身体を翻して真っ向から彼と向き合う。仮面越しに伺える古我知さんの瞳は、どこと無く悲しみの色を湛えているようだった。
「どうあっても、引き返す気はないのか」
「そういうことになる。俺を殺してでも止めるつもりなら、今のうちだぜ。世界最強のレスキューバカにならないうちに、な」
「……そうか」
俺があくまで退かないことに、彼は深いため息をつくと――僅かに距離を置き、両手の拳を強く握り締めた。
「なら、力ずくでも『普通』になってもらうしかないな。怪物候補の龍太君」
「……そうこなくっちゃな。それでこそ『正義の味方』だぜ、古我知さん」
そして、ボクシングのように顔の前で握り拳を構えながら、古我知さんはKOを宣言する。俺もそんな彼に敬意を払いつつ、水平にした右腕を腰の下に、左腕を垂直にそれぞれ構え、「待機構」の姿勢に入った。
こうなる予感は、前からあった。
瀧上さんが両親の仇だと知った時から、古我知さんとの対立の瞬間は遅かれ早かれやってくる、と。
それは、仕方のないことだ。向こうにもこっちにも、引き下がれない理由がある。
なら結局は、戦って決めるしかないのだ。いくら口でそれっぽいことを言っていても、最後に物を言うのは道理ではなく、力なのだから。
「来いよ――古我知さん」
俺は垂直に構えた手の平をこちら側へ向け、手招きするように挑発する。一触即発の空間に、一石を投じたのだ。
それを受けて、古我知さんは腰を落として地面を蹴るモーションに入った。……一気に仕掛けるつもりだな。
彼の鋼鉄の両拳に細心の注意を払い、俺も迎撃の準備を整える。
――来るなら来てみろ、そっちの拳より先に待ち蹴を見舞ってやる。
そして、古我知さんの強靭な脚が、瓦礫の床に減り込んだ、その瞬間。
「……!?」
背後から、次元が歪むような殺気が噴き出し、
「――ゴガァアアアァアァアアァアッ!」
全てを吹き飛ばす勢いの轟音が響き渡り。
「あ……ッ!?」
あの巨大な槍で突き刺すよう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ