第136話 古我知の懸念
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てくれるのだろうか。
「……んッ!」
そう考えた時、脳裏に過ぎるのは――彼女と交わした、あの口づけ。唇に感じた、あの柔らかくも暖かい感触は、今でも濃厚に覚えている。
ふとしたことでそれを思い出した瞬間、俺は自分の血流が重力に逆らい、顔の辺りに集まっていくような感覚に襲われた。……鼻先まで、真っ赤になっているに違いない。
マスクがあることに若干安心しつつ、俺はゆっくりと矢村から手を離す。これ以上触れ続けていたら、顔が隠れていても動揺がバレてしまいそうだったからだ。現に今、俺の指先は瀧上さんの恐ろしさを感じていた時よりも、激しい痙攣を起こしている。
すると、俺の手が離れた弾みで冷静さを取り戻したのか、矢村もボッと顔を赤くして俯いてしまった。――向こうも、キスのことを思い出してしまったらしい。
「龍太君。イチャイチャしているところ申し訳ないが……鮎子君を早く鮎美さんの元へ届けた方がいい。培養液がなくなりかけている」
「あッ――そうだ、四郷ッ!」
そこへ横槍を入れてきた古我知さんのおかげで、俺はようやく我に帰る。今は矢村のことで悶々としてる場合じゃないッ!
今の四郷は瀧上さんの支配から解放されたためか、特に苦しんでいるような様子は見られないが……口元や瞼から流れ出る赤い液体が、徐々に小さくなっていくのがわかる。
これが――「培養液」?
「『新人類の身体』は本体の脳髄を保護するために、特殊な培養液を使って脳の働きを維持させている。……恐らく、彼に身体を砕かれた拍子に、培養液の循環機能が狂ってしまったのだろう」
「じゃあ、これがなくなったら四郷は……!」
「――ああ。だから早く脱出しよう。鮎美さんのことだ、既に螺旋階段の天井は開けてくれているはず。格納庫は『新人類の巨鎧体』を保管するためにグランドホールより強靭に造られているから、ここよりは長持ちするし安全なはずだ。天井が開いているなら落石もない」
古我知さんの言う通り、ここは一刻も早く四郷を助けるため、今すぐ彼女を連れて脱出するべきだ。普通なら、ここに残る理由はもうない。
――そう。「普通」ならば。
「わかった。それじゃ古我知さん。四郷と矢村を連れて、先に行っててくれ。俺はまだ、確かめたいことがある」
「なんだって……?」
「え、ええぇッ!? りゅ、龍太ッ!?」
十年以上に渡る呪縛から解き放たれ、それでもなお命の危機に晒されている機械少女。その首を差し出す俺に対し、古我知さんは訝しむような声を上げた。矢村も仰天したように目を丸くしている。
彼らの反応はもっともだ。
既に「新人類の巨鎧体」は倒され、四郷も保護されている。九分九厘、俺達がここにいる目的は果たされていると言い切っていい。
ただでさえ、崩れ
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