第135話 強襲、ヤークトパンタン
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かったその現実が、眼前に差し迫った――瞬間。
俺の聴覚を、壮絶な金切り音が襲う。
「――ッ!?」
「なんだとッ!? ……まさかこれはッ!」
何事かと俺がマスクの下で目を見開くのと同時に、瀧上さんが驚愕の声を上げる。次いで、ガクンと「新人類の巨鎧体」の姿勢が大きく傾いていくのがわかった。
このタイミングで、「新人類の巨鎧体」に起きる異変。瀧上さんが首を向けた先。そして――鉄人の背面から立ち上る煙。
これらの材料から判断出来る結論は、ただ一つ。
「――おのれ小僧ォオォオオッ!」
ジェットパックに高電圧ダガーを突き立てる、古我知さんの姿を認めた瞬間。瀧上さんは火炎放射にも劣らぬ勢いで、けたたましい絶叫を上げる。
だが、この世の憎しみ全てをかき集め、一点に放出するかのような雄叫びを浴びても、白銀のサイボーグは微塵も動じはしない。
彼は淡々とした様子で「新人類の巨鎧体」の背中から飛び降りていく。どうやら、瀧上さんと俺が矢村に気を取られている隙に、ジェットパックの部分に便乗していたらしい。
俺の視界から遠ざかっていく時に手ぶらだったところを見るに、高電圧ダガーを突き刺したまま離脱したようだ。後は時間差で電流がジェットパックに流れ込めば、暴発を起こして「新人類の巨鎧体」はアリーナのプールに水没してくれる。
だが、そうなったら矢村と四郷が――んッ!?
「しめたッ!」
……どうやら、まだ彼女達を諦めるには早過ぎたらしい。
瀧上さんがジェットパックに気を取られている間に、俺を捕まえている両手の力が緩んでいたのだ。今なら、容易にすり抜けることが出来る!
俺は彼の注意をかい潜るように、自分を握り締めていた巨大な親指に両手を乗せ、己の身体を一気に引き抜く。そして巨大な鉄拳の上に乗り上げると、すぐさまそこから飛び降りた。
「間に合え……間に合えッ!」
落下しながら身体を垂直に伸ばし、弾丸のような速さで瓦礫に突撃していく。いくら脱出できたと言っても、「新人類の巨鎧体」より速く地面にたどり着かなければ、結局は同じことだ。
「えっ……!?」
予想だにしなかった展開に、思わず目を丸くする矢村。今の俺が第一にすべきは、一刻も速く下に到着して、彼女をここから逃がすこと。
「……クッ!」
俺が急降下していく先の地面に映る影が、次第に大きくなっていくのがわかる。――「新人類の巨鎧体」の墜落も、目前に迫っているのだ。
「――うおぉおぉおおッ!」
それでも、諦めることはできない。
自分達が全員生き延びる、その僅かな可能性に望みを託し、俺は気合いを絞り出していく。
……そして。
俺の紅い脚が、身体が、瓦礫の上に降り立った瞬間。
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