第135話 強襲、ヤークトパンタン
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なんとかこの状況を覆せないかと、俺は縋るように古我知さんの方へ視線を移す。だが、いつの間にか彼はその姿を消してしまっていた。……何がどうなってやがる。古我知さんはどこへ!?
「――!?」
……そこで俺は、彼女が立っている位置に気がつく。
彼女ががむしゃらに「龍太を離せ」と叫び続けている場所。そこは、俺がゴール地点としていた「アリーナ跡地」のど真ん中だったのだ。
確か彼女は、俺と古我知さんのやり取りを傍で聞いていたはず。――作戦のことを知っていてもおかしくない。
もし瀧上さんが彼女の居るところへ進み出ようものなら、「新人類の巨鎧体」はたちまちアリーナに相当するゾーンへ足を踏み入れることになる。そうすれば、後は古我知さんが背後から狙うだけだ。当の本人は何故か姿を消してしまっているが。
――しかし、そんなことをすれば矢村も一緒に海の藻屑となってしまう! まさかあの娘、それを知った上で……!?
「……よし。望みを叶えてやれ、鮎子」
そんな俺の思考を掻き消すかの如く、「新人類の巨鎧体」のブースターが巨大な火柱を噴き出した。
ただでさえ小さい矢村の姿が、さらに遠退いていく。これから俺の手が届かない世界へ、連れ去られてしまうことを示すかのように。
その時、これから見せる残酷な結末を象徴するように、「新人類の巨鎧体」が鋼鉄の片足を振り上げる。急降下の勢いに質量を乗せ、彼女を踏み潰すつもりでいるのだろう。
「や……やめろ。やめろ、やめろ! やめろォォォオッ!」
矢村が殺される。その事実を言葉だけでも拒絶するため、俺は血を吐くような想いで雄叫びを上げる。だが、その願いが聞き入れられることは有り得ない。
「新人類の巨鎧体」の急降下に潰され、矢村賀織という少女が死ぬ。
それが、現実。
俺の力では曲げようのない、定められた結末なのだ。
自分が辿る末路を自覚し、キュッと瞼を閉じる矢村。俺はそんな彼女に、手を伸ばすことも出来ない。
……なんだよ。何やってんだよ!
逃げろよ! 走って逃げるんだよッ! 逃げてくれよ、矢村ァッ!
――そう心の最奥から唸ろうとも、俺は、現実に何も為すことは出来ない。死に行く彼女を、止めることすら。
「救済の超機龍」としての責任? 笑わせる。四郷どころか、助けられたはずの矢村にこんな無茶をさせて、何が人命救助のヒーローだ。
たった一人の女の子すら、守れないでッ……!
そして、上昇を終えた「新人類の巨鎧体」の身体が、重力に引かれてアリーナへ吸い寄せられていく。
その両手に掴まれている俺も、下から突き上げて来る勢いに内臓を押し上げられた。
あらゆる動きを封じられたまま、矢村の死に際を見届ける。
拒みきれな
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