第134話 ありえない伏兵
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……ちっく――しょおぉッ!」
眼前を覆う、巨人の影。その存在が煽る焦燥感が、俺の背を強烈に突き動かしていく。仮にも重荷を捨てて、身軽になっている着鎧甲冑にここまで追い縋るなんて、いくら歩幅の差があると言っても速過ぎる。
わざわざ振り返って確かめるまでもない。……例のブースターで追尾しているのだ! そうでなければ、あんな巨体が四郷と張り合った「救済の超機龍」のスピードに付いてこれるものかッ!
「――おおおぉッ!」
しかし、だからといって諦めるには早い。
確かに追い付かれるのは時間の問題かも知れないが、例のアリーナ跡地はそこまで遠い場所ではないのだ。いつかは捕まる可能性があるにしても、それまでに目的地に飛び込んでしまえば問題はない。
俺は目と鼻の先に差し迫るゴール地点に向かい、雄叫びを上げて駆ける。
……その時だった。
「鮎子ッ!」
瀧上さんの怒号と共に、「新人類の巨鎧体」の動きに変化が現れた。その動作を忠実に表現している影を見る限りでは――拳を振り上げている!
「ちッ!」
どうやら本格的に潰しに掛かるつもりらしい。俺は舌打ちと共に、さらに体勢を前に傾けて勢いを付ける。
ここはまだ、客席だった場所に入れたかどうか、というところ。こんな半端なところで捕まってたまるか!
俺は影の動きと、金属の軋む音、そして巨大な鉄拳ならではの猛烈な風切り音を頼りに、回避を試みる。目で見て避けていられる余裕は、ない。
みるみるうちに、拳が隕石のように迫って来るのがわかる。地面ごと打ち砕き、俺を無惨なミンチにするために。
「――ッ!」
今じゃない。まだ早い。もう少し――ここだッ!
「とあぁッ!」
俺は拳の破壊力に飲み込まれる寸前、打ち出されたバネのようにその場を飛び出した。鉄拳により砕かれた瓦礫の小さな破片や、この一撃に生み出された衝撃波が、容赦なく背中に襲い掛かる。
だが、肉片になる顛末を免れたことに比べれば、安いものだ。この攻撃をかわした今、俺達の勝利が後一歩のところにまで近づいているのも、間違いないのだから。
――待ってろよ、四郷。もうすぐお前を助、け……!?
「よし――でかしたぞ、鮎子」
突如、俺の身体が空中で静止する。
しかも、強力な何かに縛り付けられるような……抗いがたい力が、全身に襲い掛かったのだ。はじめは何が起きたのか、まるで理解が追い付かなかった。
だが、瀧上さんのその一言が、この現象を端的に物語っていたことに感づくのは、そう難しいことではない。金縛りに遭ったように、全く身動きが取れないこの状況。
その謎は、俺が視線を落とした先にある、鉄人の指が解き明かしてくれた。
「……あっ!?」
俺は――「新人類
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