第134話 ありえない伏兵
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の塊である言えども、その動きが鈍重なものだとは限らない。俺は今まで以上のスピードを出せるよう、重荷にしかならない電磁警棒を投げ捨てながら「逃げ」の体勢に入っていく。
そして、俺に投棄された無用の長物が、瓦礫の山で構築された床に落ちる時。
「――やれ、鮎子」
その無骨な金属音を合図にしたかのようなタイミングで、瀧上さんの指令が冷徹に下された。
「……ア、ガガ、カッ……!」
もはや泣き叫ぶことも、助けを求めることも出来ないのだろう。四郷は舌を突き出して痙攣を起こしながら、巨大な鉄拳を振り上げてきた!
「くッ――!」
俺は体格差による圧倒的なリーチの開きを克服するべく、全力で床を蹴る。鉄人の股下をくぐり抜け、ジェットパックが取り付けられた背部が見える所まで転がり込んだ頃には、俺が立っていた場所は跡形もなく粉砕されてしまっていた。
瓦礫が幾多の破片となって飛び散り、四散していく。もし反応が一秒でも遅れていたなら、俺も肉片と化してああなっていたのだろう。
――だが、回り込んでしまえばその分だけ余裕が生まれる。
俺は即座に身を起こし、アリーナが埋め立てられているポイントへ視線を移した。エレベーターの原形を辛うじて留めていたガラクタを見れば、どの辺りがあのフィールドに相当するのかは容易に把握できる。
アリーナの位置に相当する瓦礫の山は、他の足場と見た目はさほど違わない。言うなれば、瓦礫に偽装された天然の落とし穴なのだ。
なんとかそこまで飛び込めば、あとは隠れてスタンバっている古我知さんが始末を付けてくれる。その一縷の可能性に、俺を含む全員の生死が掛かっているわけだ。
「見失ったとでも思うか!? 鮎子、後ろだッ!」
だが、やはり向こうもやすやすと俺達の思うままにはさせてくれないらしい。「新人類の巨鎧体」は僅かにその身を横に傾けたかと思うと……一瞬にして、こちらに向き直ってしまった。
身体を横に曲げてバーニアの噴射を制御することで、迅速に旋回出来るらしい。こんな動きは、十年前の映像では全く見られなかった。
――くそったれめ。ガキ相手なんだからちっとは手加減しろっての!
そんな叶うはずのない願望を胸中で垂れ流しながら、俺は踵を返す。あのデカブツがどれだけ速く動こうが、俺に出来ることはあそこにたどり着くことだけだ。
全速力でその場を飛び出し、超人的な脚力に物を言わせて幾度となく地面を蹴る。文字通り、命を懸けて。
だが、瓦礫だらけの床を駆け抜ける俺を覆い尽くすかのように、次第に「新人類の巨鎧体」が迫って来ているのがわかった。辛うじて機能している照明の点滅が、幾度となく巨人の影を映し込んでいる。闇夜の中での落雷が、悪魔のシルエットを暴き出すかのように。
「
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