第133話 ファーストキスに覚悟を込めて
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ずだ。
――だが、今は違う。今の俺は救芽井の夢を「救済の超機龍」として背負い、生きるか死ぬかの境地に立たされている。レスキューヒーローである以上、この事態に匹敵するレベルかはともかく、危険な状況に置かれることも増えてくるだろう。
その都度、俺は彼女を泣かせることになるのだ。今まさに、こうして涙を流しているように。彼女と一緒になるとすれば、常にその要素が強く付き纏うことにもなる。
学校の「芸術研究部」の連中が、彼女を盗撮を目論んだと知った時。気づけば、俺は彼女以上に怒りを覚えていた。
……もしかしたら、俺も彼女とずっと同じ気持ちだったのかも知れない。そう思うと、さらに胸を締め付けられるような感覚に襲われる。そんな彼女の近くにいるほど、俺は彼女を苦しめていくことになりかねないのだから。
大切に想えるからこそ、傍にいられない。そんな矛盾が、あっていいのだろうか。
「――あんなぁ、龍太。救芽井は婚約者かも知れんし、久水は愛人かも知れん。やけどな」
その時。
矢村は突然、さらに頬を赤くしながら俺を強い眼差しで見上げ、ユニフォームの衿を両手で掴んできた。
そして、そのまま強引に引き寄せ――
「……あんたの唇だけは、アタシのもんやで」
――俺の視界を、目を閉じた自分の顔で、埋め尽くしてしまったのだ。唇に伝わる、柔らかくも暖かい感触と共に。
紅潮した小麦色の肌と、艶やかな黒髪が俺の顔と心をくすぐる。彼女の唇は、まるで餌を求める雛のように、俺のソレを懸命に求めていた。
あまりにも唐突で、衝撃的。
俺は呆然としたまま、彼女の為すがままになっていた。
正気に戻った頃には、彼女は既に俺から顔を離し、潤んだ瞳を逸らしている。彼女も十分恥ずかしかったのかも知れないが……俺の動悸も半端なものではなくなっていた。
「……おいおい」
自分でもわかる程に顔は紅潮しており、全身が小刻みに震えているのがわかる。気づけば俺は、思わず心臓の高鳴りを抑えようと、左胸の辺りを思い切り掴んでいた。
こんな時に、こんな場所で、よりによってあの矢村とファーストキス。そんな事態が、誰が予想できただろう。
「アタシの初めて――お守り代わりやと思って、貰っといてや。アタシも、あんたの初めて……一生大事にしちゃるけん」
茹蛸のような赤い顔でそう告げると、彼女は熱い眼差しを俺に向けたまま、数歩後ろへ下がっていく。
――どうやら、キスによってある程度の踏ん切りを付けたらしい。彼女の笑みから、無理をしているような悲痛さが消え失せているのがわかる。
「……ああ!」
唇を奪ったのは、引き止めたい気持ちに決着を付けたかったから……なんだな。
お前がそこまでしてくれたん
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