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フルメタル・アクションヒーローズ
第132話 「必要悪」の所以
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な音。濁流が瓦礫を飲み込む音。終末を思わせる現象が、「音」という形で俺達に迫りつつあるのだ。
 いつ見付かってもおかしくない。いや、今見付かっていないのが奇跡、というべきか。

「本来、『新人類の巨鎧体』は水中には適応できない。『新人類の身体』と同様にね。にも関わらず、あれほど暴れさせていられる理由がわかるかい?」
「あのブースターで飛べるから……?」
「その通り。彼は僕達を皆殺しにしてから、ゆっくりと格納庫から地上に離脱するつもりでいる。エレベーターが壊れた以上、脱出路はあそこしかないからね」

 古我知さんが指差す先には、「新人類の巨鎧体」が最初に現れたスペースが見える。今となっては瓦礫だらけだが、それでも退路としては健在らしい。

「あそこには地上に繋がる螺旋階段がある。『新人類の巨鎧体』を始末したら、それを使って脱出しよう」
「始末……? 何か作戦でも?」
「ああ。君の言う通り、『新人類の巨鎧体』の生命線はあのジェット機能にある。そして、今は瓦礫だらけになってるアリーナの下には、大量の海水がある。僕の狙いは、わかるね?」
「ブースターを壊して、プールになってるアリーナに沈めよう……ってことか。確かにそれなら仕留められるけど、本当に上手く行くのか?」
「僕一人なら一瞬でおだぶつだね」

 俺の問いに対し、彼は「自分だけでは不可能」とあっさり断じてしまった。真剣な顔でそう言い切るのだから、それだけ彼にとっても厳しい相手である、ということなのだろう。

 「新人類の身体」の能力を得たサイボーグでも、たった一人では絶対に敵わない敵。そんな強大な存在を見据えていた眼差しは、いつしか俺に向けられていた。

「そこで、君には君の言葉で云うところの『囮』としての責務を全うして貰う。アリーナのところに引き付けてくれさえすれば、僕が高電圧ダガーを背部のジェットタンクに突き刺して終わりにする」
「ジェットタンクに突き刺す……!? そんなことをしたら!」
「大丈夫だ、うまく電流を時間差で流し込むように調整すれば、すぐには爆発しない。飛行能力を失った『新人類の巨鎧体』は鉄屑と化し、瓦礫を突き破り海に沈む。瀧上凱樹がその事態に気を取られている間に、鮎子君の首を奪還するんだ」

 一度殺されかけたことで達観しているのか、それとも感覚がマヒしてるのか。いずれにせよ、古我知さんの提案する作戦がとんでもない博打の連続なのは間違いなかった。

 下手をすれば突き刺した瞬間に俺達が全て吹き飛ぶ可能性もあるし、瀧上さんが「新人類の巨鎧体」の水没をさほど気に留めず、隙を作らなかったら、四郷も一緒に魚の餌になる。

 ――それに、古我知さんの作戦で行くと、少なくとも瀧上さんは絶対に殺すことになる。確かに、戦うための身体に改造された彼なら、躊躇
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