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フルメタル・アクションヒーローズ
第132話 「必要悪」の所以
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装置を付けられたのも、その頃なのか?」

 手足を引きちぎられた、という話を聞かされた俺の脳裏に、所長さんの部屋で見た「四肢断裂」という単語が蘇る。両手両足を持って行かれた彼が、こうして五体満足(にも見える格好)で俺の前にいる以上、所長さんが何かしたとしか考えられない。

「あぁ。『新人類の身体』のテクノロジーを応用した電動義肢。そして、停止寸前だった血液の循環をカバーするための、心臓を補佐する生命維持装置。おまけに研究中だったっていう高電圧ダガーも取り付けられた。ちょっと例えが違うかも知れないけど、子供の頃に甲侍郎さんに見せられてた、仮面を付けた改造人間のヒーローみたいだね」
「ヒーローねぇ……。そういやそのマスクを外した途端、声が元に戻ったよな? どういう仕組みなんだ」
「ただの変声機能付きのヘルメットだよ。それ以外の機構は君のと大して変わらない。……十年前の瀧上凱樹の声、か。結局、彼女が欲しいのは僕じゃなくて、ヒーローだった彼なんだよね……」

 寂しげな声を漏らす彼だが、その武骨な見なりのせいでどうしてもミスマッチに感じてしまう。

 ――機械に詳しいわけじゃないから全て理解できてはいないんだが、要するに、いわゆるサイボーグとして生まれ変わった、ということなのだろう。あまりにも変わり果ててしまった自分の身体に、彼はただ苦笑するばかりだった。

「このおかげで、僕自身は随分と強くなれた。君に負けないくらいにね。……でも、偵察自体は大失敗どころか、瀧上凱樹をより警戒させる結果を招いてしまった。そこで、甲侍郎さんは救芽井エレクトロニクスと四郷研究所でコンペティションを擬似的に行わせて、その隙を突いて一網打尽にする計画を新たに立案した。僕は、その段取りを手伝うことになったんだ」

 半分以上が人間じゃなくなるような目に遭っても、好きな人に危害を加えかねなくても、彼はあくまで甲侍郎さんに従っていたらしい。

 「着鎧甲冑の繁栄」。自分自身の行動基準が全てそこにある限り、どこまでも突き進んでいく。古我知さんは、そういう男なのかも知れない。

「それでおばちゃんを線路に放り込んだり、茂さんに『救済の超機龍』のことを吹き込んだりしてたってわけか。……俺が瀧上さんの様子を見るための『囮』に相応しいか、見定めるために」
「そう卑屈にならないでくれ。甲侍郎さんが君の働きに期待していたのは事実だ。そして――僕もね」

 古我知さんはそこで言葉を切ると、一転して厳しい眼差しに切り替え、隙間の先に見える「新人類の巨鎧体」を睨みつける。次の瞬間、引っ切り無しに響き続けていた轟音が、一際大きなものになった。
 例の赤褐色の鉄人は、かなり近いところにまで迫っている。あの巨人と俺達の間にある距離は、もう五十メートルもない。何かを引き剥がすよう
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