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フルメタル・アクションヒーローズ
第132話 「必要悪」の所以
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てるし、それなりに耐性は付けてるつもりだ。遠慮はいらん」
「そうか。……両親を失い、君に敗れ、救芽井家からも見放されたと思った頃だったよ。甲侍郎さんが現れて、この件の話を持ち掛けられたのは」

 古我知さんは俺の了解を得ると、この「隙間」の外から、さらに遠い世界を見るような目で、静かに説明を再開する。

「僕は、君が言うところの所長さん――つまり鮎美さんとは面識があってね。そのツテを利用して、四郷研究所を偵察するように頼まれたんだ。僕自身の釈放を条件にね」
「所長さんと知り合いだったのか? でも、あの人は確か帰国してすぐに……」
「――彼らがこの研究所に逃れてから数ヶ月、彼女は施設で孤立していた僕の遊び相手になってくれていたんだ。何も知らなかった僕は素直に彼女を慕っていたし、救芽井家に引き取られてからも、連絡は取り合っていた」

 俺の知らない、所長さんの話を始めた古我知さんの頬は僅かに紅潮しており、声もやや上擦っている。……なるほど、そういうことか。

「大人になって、彼女の実態を知ってしまっても、僕らの関係は変わらなかった。どんな経緯でも、やっぱり僕にとっては姉のような人だったから。向こうも、犠牲者の中に日本人がいたことを突き止めてからずっと、遺族だった僕を気にかけてくれていたみたいだし」
「なるほど。で、そのツテを使って瀧上さんのことを調べろって言われたわけか」

 昔から彼女と繋がりがあったとするなら、「新人類の将兵」に「解放の先導者」の面影が感じられていたことにも説明がつく。
 大方、彼女が流した情報を使ってあの機械人形を量産し、「技術の解放を望む者達」を組織したんだろうな。十年前に十二歳だった古我知さんが「大人」になる頃といえば、二年前の事件とも重なる。
 ――それだけの関わりがあるなら、瀧上さんを潰したがってる甲侍郎さんに目を付けられるのも当然、ということか。

「……うん。父さんや母さんの仇が取れるとしても、彼女にも危害が及びかねない以上、乗り気ではいられなかったけどね。そんな中途半端な気持ちが災いしてか、あの瀧上凱樹にあっさり感づかれてしまったんだ」

 そこで彼の声のトーンは急激に下がり、白銀の篭手が額の傷をさする。……その時に付けられた傷だったんだな、あれは。

「酷いものだったよ、本当に。鉄の拳で頭を裂かれ、両手両足をもぎ取られ、最後はゴミのように研究所からつまみ出された。後で駆け付けた鮎美さんが、彼に隠れて僕を治療してくれなかったら、間違いなく命を落としていたよ」
「……矢村が耳を塞ぐわけだ。相変わらず優しい口調でえげつない真似する野郎だぜ」
「そうだね、その通りだ。でも、それも鮎美さんに助けられた命を繋ぐためだ。今回ばかりは見逃して欲しい」
「その『命を繋ぐため』だって云う生命維持
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