第131話 方言少女と改造人間
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てるようだけど、ここを嗅ぎ付けるのも時間の問題だと思った方がいい。鮎子君をもう一度助けに行くなら、早く作戦を練る必要がある」
彼の言葉を耳にして、試しに隙間から差し込む光明を覗き込んでみると――百メートル程先に、「新人類の巨鎧体」が俺達を見つけようと、片っ端から瓦礫を漁っている様子が伺えた。コンクリートが粉砕され、大量の水が流れ込んでいく轟音が、絶えず振動となってこちらに響き続けている。
確かに、しらみつぶしに瓦礫をひっくり返している彼らが、徐々にこちらに近づいているところを見れば、時間がないという事実だけは一目瞭然だろう。
――それにしても、随分と派手に暴れてくれたもんだ。到底、さっきまでコンペティションをやっていた空間だとは思えないくらいに。
今でも引っ切りなしに落石が起きているし、浸水もさらに深刻化している。俺が気絶する前までは、客席に海水が僅かに入って来る程度だったのに、今となっては陸地になってる部分の方が少ないくらいなのだ。
その上、天井の照明まで壊れており、あちこちで発生している火災が、辛うじて明かりの役割を果たしている。
……「長く持たない」どころじゃない。いつ天井が総崩れを起こして、全員が生き埋めになってもおかしくない状況だ。
「次に、矢村ちゃんのことだけど……どうやら彼女、『新人類の巨鎧体』が一発目の急降下を仕掛けた時に、エレベーターに乗り損なって吹き飛ばされてたらしいんだ。幸い、どこにもぶつからなかったおかげでケガは免れたみたいだけど、エレベーターが壊れてたことで途方に暮れてたんだって」
「う……」
すると、いきなり現れた彼にキツいところを指摘され、負い目を感じたのか、矢村は泣き止むだけでなく俯いて押し黙ってしまった。
「そんな折、偶然にも客席に転がっていたR型の『腕輪型着鎧装置』を拾って、君の手助けをしようって考えたらしい。聞くところによれば、彼女自身も君に付き合って着鎧甲冑のことを勉強していたそうだからね」
「……やけんど、アタシ、怖くて何にも出来んかったんや。龍太も『必要悪』さんも命懸けで頑張っとんのに、アタシも着鎧甲冑を持っとったはずやのに。――あんたらが戦いよる時も、アタシは瓦礫の影で震えるだけやった……」
俯きながら話す矢村の姿は、さながら取り調べを受ける容疑者の様だった。本来の彼女なら滅多に見せない、明るさのかけらもない振る舞い。
そんな彼女のありように、俺は困惑せざるを得なかった。それだけ、悔いているのだろう。自分が、何も出来なかったことに。
――本来なら「なんでさっさと逃げなかった!」と文句の一つくらいは言ってやりたいところではある……が、俺に彼女を責める資格はない。そもそも俺について来るようなことにならなければ、こんな危ない目に遭う
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