第129話 ドラッヘンファイヤーとして
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「……ガッ、ア、アァァアアアーッ!」
「新人類の巨鎧体」に取り込まれた四郷に異変が訪れたのは、すぐのことだ。
コックピット周辺の計器類やモニターらしき部分が光るのと同時に、接続機に繋がれた彼女の瞳が白目を剥く。
そして次の瞬間、壊れた機械のような絶叫が、グランドホールに轟いたのだった。制御を失い、暴走するマシンそのものと言うべき彼女の悲鳴は、もはや人間の声帯で出せる代物ではない。
――自分を絶望に落とし込んだ、悪夢の象徴。その忌まわしいはずの存在に、今度は自分自身が成り代わろうとしている。
その事実をたたき付けられ、今度こそ完膚なきまでに、精神を破壊されようとしているのかも知れない。
次いで、時が止まったかのように静止していたはずの「新人類の巨鎧体」にも、遂に動きが現れる。――だが、それは俺が予想していたものとは、大きく違っていた。
甘えるように巨大な両腕を伸ばし、地響きと共にすり足でにじり寄るその動作は、さながらゾンビのようだ。瀧上さんによって無理矢理操縦させられているとは言え、やはり基本は四郷自身の意志が行動を左右するのだろう。
「鮎子。『新人類の巨鎧体』を操っているお前なら、わかるはずだな? なにをやるべきか。誰を倒すべきか」
「オ、ネェ、ヂャン……オ……ネェチャン……! オ、ネ……」
……赤いオイルの涙を流し、白目を剥いたまま泣いている彼女の顔を見れば、何が目的かなどは考えるまでもない。
「まさか四郷鮎子君の脳髄を利用するとは……くッ!」
「しゃ、社長! 奴が起動してしまっては……!」
「わかっている! いくらパイロットが彼女であるとは言え、瀧上凱樹の手中に落ちている事実に間違いがない以上、危険であることには変わりない! 総員撤退だッ!」
一方、彼女の足元にいる甲侍郎さん達は、着鎧を解かれた茂さんを抱え、こちら側に一斉に飛んで来ていた。そして、この場にいる全員に撤収するよう呼び掛けている。
「――辛いけど、こうなったら逃げるしかないわ。久水さん、行くわよ!」
「で、でも鮎子が……! 鮎子があんなにぃっ……!」
「今ここで正面からぶつかって死ぬのが、あの娘の助けに繋がるの!? 地上に出て体制を立て直せば、助けるチャンスはきっとある! 向こうも『新人類の巨鎧体』を動かすには四郷さんが必要なんだから、殺されることは絶対ないッ!」
「……わかりました、わ……」
久水は四郷を放っておけないとばかりにむせび泣いていたが、救芽井の叱咤により僅かに立ち直ったようだ。
こんな状況でも先のことを考え、助ける見込みを決して捨てない彼女の姿勢には感嘆するしかない。やっぱり、スーパーヒロインとしての経験値ってのは伊達じゃないな。
――だが、この場から撤退する気配がないのは
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