第129話 ドラッヘンファイヤーとして
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久水一人ではない。未だに戦う姿勢を崩していない「必要悪」と、さらにもう一人。
「……鮎子……ごめんね、ごめんね……」
「所長さん、あんたも早く逃げるんだ! 四郷が瀧上さんの言いなりに暴れ出したら、ここもおしまいになっちまう!」
「一煉寺龍太の、言う通り……ですッ! 鮎子君は、必ず助かる! そして、彼女が再び帰ってくる場所には、あなたが必要なのですよ! ――鮎美さんッ!」
最愛の妹が残した眼鏡を握り締めたまま、呆然と立ち尽くしている所長さん。そんな彼女を説得しようとしていた俺に、意識を取り戻した茂さんが続く。
「……そう、ね。そうよね。私も、生きなきゃ……ね」
呪文のようにぶつぶつと呟きながら、彼女は生き残りのG型部隊に引きずられるように、エレベーターへ向かっていく。瀧上さんに倒された人々や、伊葉さんのような生身の人間が、優先的に退避させられているようだ。
「ど、どないしよ、ア、アタシもなんかした方がええんやろか……や、やけんど……」
忙しく動き回る周囲に翻弄されてしまっている矢村が少々気掛かりだが――まぁ、甲侍郎さん達がなんとか保護してくれるだろう。今は、彼らを頼るしかない。
「龍太君。あなた……もしかして残る気?」
その時、エレベーターへ移動していく人々を眺めていた俺の背に救芽井の声が響いて来る。振り返った先に見える「救済の先駆者」のマスクの口元は、笑っているようにも見えるが……その不安げな声色をごまかすことは出来ない。
この察しの良さも、恐らくは経験の賜物なのだろう。よほど雰囲気に出ていたらしい。
「――まぁ、な。四郷があんなことになってる以上、放ってはおけない。後で助けられるにしたって、その時に彼女が無事かどうか……それに」
「今まで瀧上凱樹を『いなかった』ことにしようとしていた日本政府が、彼の眷属同然の彼女を生かすはずがない……って?」
「そこまで分かってるなら、話は早い。救芽井はみんなをなんとかエレベーターで地上まで送り届けてくれ。アレに乗ってるのが四郷だからって、全員素直に逃がしてくれる保証はない。『必要悪』の奴も逃げ出す気配がないしな。……あいつの実態は知らないが、『新人類の巨鎧体』とやり合う気でいるなら時間稼ぎはできるはずだ」
恐らく、瀧上さんは俺達を四郷に始末させた後、あの壁に偽装していた格納庫から地上に上がり、やりたい放題に暴れるつもりなのだろう。逃げたら逃げたで、追い掛けて来るに違いない。
そこまで行けば、伊葉さんの言う通り、日本政府も重い腰を上げなきゃならなくなるはず。瀧上さんを倒すだけなら、それだけで十分だろう。俺が残る理由もない。
……だが、四郷はどうなる? 散々巻き込まれて機械の身体にされた挙げ句、自分にトラウマを植え付けたマシンに縛ら
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