第128話 四郷鮎子、散る
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、遂にそこへたどり着いた瞬間。
「――ぐはぁアァッ!?」
「くぅッ!?」
瀧上さんは押し黙ったまま、茂さんと「必要悪」を跳ね退けるようにその場を飛び出し、「新人類の巨鎧体」のコックピットへと引き返してしまったのだ。茂さんより動き出しが遅かった「必要悪」は、一撃を叩き込む暇もなく弾かれてしまう。
――そう。茂さんの全力攻撃を首に受けても、彼は全く反応を示さず、そのまま何事もなかったかのように帰ってしまったのである。まるで、茂さん達の存在など初めから認識していなかったかのように。
だが、その一方で茂さんのダメージは深刻なものになっていたらしい。迎撃のような形で強烈な体当たりを喰らってしまった彼の身体は、紙切れのように吹き飛ばされ、アリーナの床にたたき付けられてしまっていたのだ。
その衝撃に着鎧甲冑自体がとうとう耐え兼ねたらしい。着鎧が解かれた瞬間、茂さん自身の苦痛に歪む表情があらわになっていた。真正面から体当たりを受けた分、横から襲おうとして吹っ飛ばされた「必要悪」より遥かに重い損傷だったのだろう。事実、「必要悪」の方は吹き飛ばされたと言っても、数メートル引き下がる程度で済んでいる。
「お、お兄様アァァッ! ……あ、あゆ、こ……い、いや、いやぁ……!」
あれ程の冷静さを保ち続けていた久水も、親友の惨状を目の当たりにしたショックのあまり、今となってはただ泣き崩れるばかり。かつての女帝の姿は、もはや見る影もなくなっていた。
……いや、ここは「本来の彼女に戻った」、と言うべきなのかもしれない。親友を想う、ただ一人の優しい少女に。
「くッ……瀧上凱樹ッ! 貴様、四郷鮎子君の首を取ってどうするつもりだッ!」
そして彼女の悲鳴に突き動かされるように、今度は甲侍郎さんが怒号を上げる。しかし、瀧上さんは全く反応を示さず、冷たい鉄兜越しに冷たく俺達を見下ろすばかりだ。
「ま、まさか、彼は……! 本気なのか!? 凱樹君ッ!」
そんな時、何かに気づいたかのように、伊葉さんが驚愕と焦燥の入り混じった声色で叫ぶ。次いで、所長さんの表情もみるみる蒼白になっていった。
「うそ……でしょ。ねぇ、冗談よね……? あ、鮎子ッ……! 凱樹っ……!」
……なんなんだ? 二人は一体何に……ん?
『脳波を感知することでイメージ通りに操縦することができる……』
――脳波を、感知して、操縦……。
……まさか!?
「さぁ、鮎子。遂にお前の力を見せる時が来たな。オレ達の正義を今こそ、この者達に見せてやろう」
瀧上さんの狙い。その実態に感づき、俺の顔面から一瞬で血の気が失われる。そして、彼は俺の予想を忠実に再現した。
死人のような顔になっている、四郷の頭部。それが今、コックピットの
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