暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第127話 惨劇の再来
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分かっても、彼女は眉一つ動かさないのだ。
 「新人類の巨鎧体」が動きを見せない理由。その実態に近づけると期待している人々は、彼女が口を開く瞬間を静かに待ち続ける。
 そして、そんな彼らを一瞥した彼女は、ふぅ、と小さなため息をつくと、神妙な面持ちのまま語り始める。その視線は、かつて愛した「ヒーローの成れの果て」へと向かっていた。

「……『新人類の巨鎧体』は、接続機がパイロットの脳波を直接受信することによって起動する。接続器に凱樹の脳波をシャットアウトするように調整すれば……」
「脳波をシャットアウトだと? どうやって」
「先日、地上の階にある電子制御室でちょっと、ね。私の知らないところで、凱樹自身が『新人類の巨鎧体』に手を加えてる可能性もあったから、上手く行くかは半分博打だったけど」
「……やはり、この事態は想定済みだったのだな。『新人類の将兵』にはプログラミングは通じなかったのか?」
「凱樹自身が造った『新人類の将兵』のシステムに干渉するには、アリーナのあの端末に向かうしかないからね。コンペティションを控えて神経質になっていた彼が、毎日陣取ってるようなところに近づけってのが無理な話よ。――彼自身にも、どこか私のすることを予感してる節があったし」

 甲侍郎さんと所長さんのやり取りを聞く限りでは――どうやら瀧上さんが搭乗できないように、所長さんが小細工をしていたらしい。
 そういえば彼女は夕べ、電子制御室に行っていたと聞いている。瀧上さんを止められるかどうか、という「賭け」のために。
 ……その実態が、このシステムの改竄だったってわけか。確かに瀧上さんが「新人類の巨鎧体」を使えなくなれば、あの巨人は脅威ではなくなる。操る人間が居なければどんな兵器も鉄屑にしかならない、という簡単な結論は、小学生でもわかることだ。

 ――だが、それで終わりなのか?
 「新人類の将兵」を弄らせなかった瀧上さんが、「新人類の巨鎧体」にちょっかいを出されるケースを、本当に想定してなかったのか?
 瀧上さんは確かに、まんまと所長さんの賭けに引っ掛かって「新人類の巨鎧体」を操作する権利を剥奪されている。だが、今の彼は辺りをゆっくり見渡しているばかりで、よく見てみると取り乱すような雰囲気はまるでなかったのだ。
 切り札を失ったにしては……あまりにも冷静過ぎる。今までの彼の言動からして、怒り狂ってコックピットから飛び出して来るものとばかり思っていたのだが――あの様子からは、そんな威圧感は微塵も伺えなかった。

「……つまり、あの巨人は動けないということですね。鮎美さん?」
「そういうことになるわね。――凱樹自身が脅威であることに、変わりはないけど」
「大丈夫です。『新人類の巨鎧体』が動かないというのであれば、もはや恐れるものはない。――皆の衆、ケリ
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