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フルメタル・アクションヒーローズ
第126話 鮎美の賭け
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ことが、許されてなるものかッ!」

 戦いに傷つき、痛ましい亀裂ばかりとなった床を殴り付け、甲侍郎さんが唸る。その拳を僅かに浸す海水は、やがてこの場を含めた地下そのものを全て飲み込んでしまうのだろう。

 「新人類の巨鎧体」が現れた穴から溢れ出る海水の波は、今でこそ緩やかにグランドホールへ流れ込む程度で済んでいるが……彼が本格的にアレで暴れ出すつもりでいるなら、間違いなくこんなものでは収まらなくなる。

「彼は我々をあの必殺兵器で蹂躙するか――もしくは、このまま全員を海に沈める気でいるのかも知れん。あれがもし彼の意のままに動き出してしまえば、この広大な地下室といえど長くは持たん!」
「伊葉様ッ! あの巨大な人型兵器は、奴の切り札だというのですかッ!?」
「……そうだ。あれは凱樹君が中東のあらゆる武装集団を駆逐するために、アメリカ軍と鮎美君に造らせた、人型破壊兵器『新人類の巨鎧体』。国も民もことごとく焼き尽くす、文字通りの『悪魔の兵器』だ」

 茂さんの問いに答える伊葉さんの声は、嘆きと失望の色を滲ませていた。

 「新人類の巨鎧体」を持ち出されたことで、瀧上さんに「引き返す」意思はないのだと、改めて思い知らされてしまったのだろう。
 それ程までに、あの巨人は彼にとっても脅威な存在なのだ。「眼前にそびえる巨人」という「光景」がもたらす苦痛に歪む表情が、それを証明している。

「そ、そんなん……か、勝てるわけ、ないやんっ……!?」
「ど……どうしたらいいのよ、そんなのッ!」

 そして、そんな彼の発言が与えた衝撃も、生半可なものではない。
 過去に国一つを滅ぼしたとも言われる、瀧上さんの所業。その力の根源があの巨人だというのだから、周囲に撒き散らされたプレッシャーも大きい。明確に動揺している救芽井や矢村だけでなく、他の皆もどこと無く焦燥感を漂わせていた。所長さんと「必要悪」を除いて、だが。

「――いずれにせよ、あのようなセンスのない鉄屑に殺される人生などまっぴらざます。伊葉さん、アレに対抗しうる手段はなくって?」

 いや、もう一人いた。どうしようもない変態の割に、誰よりも肝の座っている彼女が。

「陸上自衛隊に協力を仰げば、なんとか対処は出来るだろうが……それは彼の件が明るみになることにも繋がりかねんからな。凱樹君の存在を『なかったこと』にしたい現政府の連中が助けてくれるとは考えにくい。彼に日本で暴れられては存在の否認など結局は不可能なのだが、政府がそれに気づくのは彼が地上に出た後になるだろう」
「何かが起きてからでしか国は動かない……ということでして? 下衆の極みですわね。で、現戦力で勝てる見込みは?」
「皆無、だ。いかに着鎧甲冑や『必要悪』といえど、あの巨人と真っ向から戦いを挑める望みなどあるものか。
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