第124話 釈迦の掌上
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もりでいたのだが――こんな暴れっぷりを見せ付けられては、近づくことすら憚られてしまう。迂闊に止めに入ろうものなら、振り回されている個体の刃で、こっちの身体が二分割されかねん。
「――った方がよろしいんじゃないでしょうか……」
「え、何か言った?」
次第に声が萎んでいく俺に対し、救芽井はジャイアントスイングを続けながら「え? 何だって?」と言わんばかりに首を傾げている。なんというハーレム系主人公。
「樋稟があれほど戦っているというのに、私は……!」
「悔やむ暇があるなら、まずは生き抜くことですぞッ! 自分の生還に勝る栄光など、ヒーローとして有り得ないのですからッ!」
そんな猛々しい娘の戦いを見て、甲侍郎さんは沈痛な声を漏らしながら、必死に電磁警棒で電熱の刃を凌いでいる。
そして、茂さんは彼を助けるように檄を飛ばしながら、彼に迫る「新人類の将兵」達にフェンシングの如き刺突を連続的に浴びせていた。
「――その通りよッ! こんなことになるなんて、全然思わなかったけど……そんなの、もう関係ない。何があっても、私達は絶対にみんなで生きて帰る! それが、それが――」
さらに、茂さんの言葉を受けて士気を高めたのか、救芽井の回転がますます加速していく。そこから生まれた風圧の勢いで、周りの「新人類の将兵」達が転び始めた……!?
「――『着鎧甲冑』なんだからぁああッ!」
次の瞬間。俺は、眼前の状況を整理するのに数秒のタイムラグが生じていた。
彼女のけたたましい叫びと共に放たれた一撃が……想像を絶していたからだ。
周囲を巻き込む程の勢いから飛び出す、ジャイアントスイングからの強烈な投げ飛ばし。その犠牲となった「新人類の将兵」は、閃光の如き速さで悲惨な運命を辿る。
砲弾のように打ち出された鋼鉄の身体は、周囲の同胞達はおろか、そのまま射線上に居た「甲侍郎さん達を狙うグループ」や「客席側にいたグループ」などの同胞達まで切り裂いた挙げ句、アリーナの壁に無惨に減り込み、動かなくなってしまったのだ。
大多数の「新人類の将兵」に痛烈なダメージを与えたこの一撃には、さすがに驚かざるを得ない。もうあいつ一人でいいんじゃないかな――とは思わんが、これほどの大惨事をやってのける彼女が味方側に居ることは、素直に喜んでおいた方がいいだろう。
一方、久水は彼女の一発を見て「計画通り」といいたげな顔で口元を吊り上げている。あんなに悍ましい彼女の顔を見るのは初めてだ……。
「――来たわねッ!」
しかし、その時だった。救芽井の気を引き締めた声と共に、全ての「新人類の将兵」がこちらに赤い眼光を固定したのは。
俺が久水のリアクションに気を取られている間に、救芽井は俺の前面に出てファイティングポーズを構えており、
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