第123話 ヒーローを統べる女帝
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得して頂けるとは光栄ですわね。おかげさまで容易くこちらの命令系統を統一できますわ。――ですが指示を出す前に一つ、お尋ねしたいことがあるざます」
「何かね?」
「ワタクシにサインを教えたのは――初めからこの戦いに利用するため、でして?」
その瞬間、久水はかつてない程の冷たい眼差しで、目上の存在であるはずの甲侍郎さんを睨みつけていた。
どんなに有力で高潔な人間だろうと、答えによっては決して許さない。そう、彼女の眼光が叫んでいたのだ。
「――見損なってくれるな。私はただ、その若さで久水財閥の秘書を務め、日本経済に大きな繁栄をもたらしたこともある君の手腕と才能に、ただ純粋に惚れ込み、見込んだまでのこと。サインを教えたことには、『兄上の助けになるように』という願い以外の意味はないし、このような血生臭い争いに加わらせるつもりなど、毛頭なかった」
だが、そんな地に這う害虫でも見るかのような眼光を突き付けられても、甲侍郎さんは決して怯んだり憤ったりするような反応は示さない。
ただ毅然に、誇りを以て己の真実を訴えるように、真っ向から彼女の瞳と向き合っていた。……確かに、甲侍郎さんの読み通りに六人の精鋭だけで事足りていたならば、こうしてディフェンドゥーズサインとやらが使えるという、久水の手を借りることもなかっただろう。
「……それを聞いて安心しましたわ。ワタクシの力が、このような醜い争いのためだけに使われるなど、到底堪えられるものではありませんもの。ワタクシの全ては――生涯を懸けて愛すると誓った、あのお方のためであるべきなのですから」
すると、そんな甲侍郎さんに対して、久水は表情を一転させ、にこやかな微笑を浮かべて見せた。さっきとはあまりにも違う穏やかな声色に、底知れぬ不気味さを感じてしまった俺は、もしかしてものすごく失礼なのかも知れない……。
しかも、久水自身が「あのお方」と称して、熱い愛情と情欲に爛れた視線を送っていたのは――茂さんではなく、あからさまに俺だったのだ。
……お、おいちょっと待ちたまえよ。話の流れからしてそこは茂さんだろ? どうひっくり返しても俺じゃないだろ!?
「……これは、ますます詳しく聞かせて貰わねばならんようだな。龍太君」
ちょっ――甲侍郎さん違うんです! 何一つとして違わないけど違うんです! ほ、ほら、今はそんな場合じゃないしッ!
「まぁ、今はいい。ともあれ、久水梢君――ご協力に感謝する」
「礼には及びませんわ。あのお方を守ることに繋がるのであれば、ワタクシも協力は惜しまないざます」
「うむ。……さて、聞いての通りだ。各員に通達。これより我等は一時、久水梢嬢の指揮下に入る!」
そして、そんな俺の心情を知ってか知らずか、甲侍郎さんは久水との僅かなやり取りを挟
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