第122話 「天敵」の残光
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逃げるような速さではない……何かするつもりなのか?
迂闊に後ろから飛び掛かれば鞭が飛んで来るということは想像に難くない上、「必要悪」を除くほぼ全員がそれに対応できないと考えられる以上、誰も手出しが出来ないまま、彼の挙動を見守る形になっている。
やがて彼は、アリーナの壁――というよりは、閉ざされていた大きな扉の傍らに立ち止まった。
「――ッ!? まさか『新人類の将兵』を……いけないッ! 凱樹、もうこれ以上罪を重ねては――」
「……貴様らの死因は、このオレの『勲章』を破壊したことで、オレ自身の全機能を解放してしまったことだ」
そこで彼が何をするか気づいたらしく、所長さんが声を荒げる。しかし、瀧上さんはそれを遮ると、扉の傍らにある壁の一部を、紙を破るように引き裂いた。
「恨むなら――そこの小僧を恨むがいい。地獄で、な」
そして……そこに隠されていた何かのコンピュータに、静かに手を翳す。
すると、彼の掌の中から幾つものコードが触手のように飛び出し、コンピュータの接続部全てと合体してしまう。
一体彼が何をするつもりなのか。何を仕掛けるつもりでいるのか。
その疑問は、彼がコンピュータと自分のコードを繋いだ瞬間、傍らの巨大な扉が開かれるのと同時に、全て氷解してしまった。
鉄で造られた、高さ数メートルに渡る扉。俺達が固唾を飲んで身構える中で、それは重々しい音と共に解放されていく。
まるで、数十年に渡って封印されていた呪いを、解き放つかのように。
そして、開かれた扉の先に待っていたのは――闇。全てを飲み込まんとする、暗闇そのもの。
猛獣の群れの如く、その奥で閃く幾多の赤い光点が、えもいわれぬ悍ましさを放っていた。
「あっ、あれ……何っ……!?」
その恐怖に煽られてか、救芽井が怯えるような声を漏らした瞬間、赤い光点は電源を入れられたロボットのように動き出す。
奥から何度も響いてくる、無骨な機械音。
そのタイミングはまるで――足音のようだった。
赤い光点。
その正体はほどなくして扉の奥から現れ――俺達に戦慄を与える。
「『新人類の将兵』……。凱樹が専用コンピュータに自己のプログラムを接続することで、直接的にコントロールされた――『人工知能私兵部隊』よ」
両手を床に付け、諦めたように所長さんが呟く。だが、その言葉を聞いても、誰ひとりとして彼女の方に視線は向けなかった。
釘付けにされていたからだ。
扉から現れ、眼前でうごめく――二十体近くものロボットの軍勢に。
今の瀧上さんを彷彿させる、無彩色の鋼鉄のボディ。鎧の節々から飛び出している、刃のような突起の数々。鉄兜の隙間を引っ切り無しに動き続ける、
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