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フルメタル・アクションヒーローズ
第122話 「天敵」の残光
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フゥッ――!」

 それとほぼ同等のタイミングで、「必要悪」の白いマントが翻され――その中から一振りの短剣が現れる。青白い電光を発しているその刀身は、自らが普通のナイフではないことを克明に主張しているかのようだった。

 彼は刃渡り三十センチ程度のサバイバルナイフを思わせる、その短剣を逆手に構えると……鞭の一撃を受け流すかのような一閃を放ち――瀧上さんの鞭を凌いで見せる。

 「のれんに腕押し」。この太刀合わせを表現するのに、これほど相応しくシンプルな言葉はないだろう。

「……ッ!? チィイッ!」

 あまりの手応えのなさ。あまりの効果のなさ。その現実を振り払わんと、瀧上さんはさらに強烈に鞭を振るう。さっきのような単発ではない。時折、僅かな時間差を挟みながらも、ほぼ連続で攻撃を仕掛けていた。

「――フンッ! ハァッ!」

 だが、そのいずれも「必要悪」の白い鎧を傷つけるまでには至らず、空だけを斬り続けていた。頭上から足元まで、自分の身体のありとあらゆる場所を狙って飛んで来る鞭を、彼は全て的確に迎撃しているのである。
 G型の精鋭六名でもまるで太刀打ちできなかったレーザーウィップとやらに、完全に対応している「必要悪」。その戦闘能力は――俺達のそれを遥かに凌ぐものだったのだ。

 「必要悪」の全身という全身を狙った熾烈な攻撃は、やがて火が燃え尽きるかのように勢いを失い、ついには完全に止んでしまう。
 再び訪れた静寂を次に打ち破ったのは――

「……貴様の攻撃は強い。だが、その程度では永遠に僕は殺せない」

 ――白銀の騎士が無機質に言い放つ、その一言だった。その声色は、俺が思う人物とは違っているが――やはり口調だけは、完全に「合致」している。
 なぜ十年前の瀧上さんと同じ声なのかは知らないが――繋がりが全くない、とは言えまい。

「高電圧ダガーだと……! ここで研究されていたはずの武装を、なぜ貴様が……?」

 一方、瀧上さんは「必要悪」の持つ武装について何か知っているらしく、彼に向けて訝しげな視線を送っていた。そして、その眼差しはやがて――所長さんに移される。

「――そうか、そういうことか。どこか見覚えのある太刀筋かと思えば……」
「……凱樹。もう、いいでしょう? たくさんでしょう? お願いだから、もう――」
「お前もオレを見放すというのであれば、それも構わん。オレはオレの『正義』を通すまでだ」

 あれだけの目に遭わされてもなお、所長さんはあの鉄人に対して、懸命に説得の言葉を繰り返していた。その姿の痛ましさに、夕べの救芽井の涙が重なって見える。
 だが、それだけの悲痛な願いも、瀧上さんの前では裏切りの宣言でしかないらしい。彼は興味を失ったように所長さんを視界から外し、踵を返してしまった
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