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フルメタル・アクションヒーローズ
第120話 歪んだ正義と狂気の幕開け
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じ込めようと、もがいているかのような悍ましさが、手から腕へ、腕から全身へと広がっていく。

「な、なんです、って……!?」
「えっ、く、国……!? 滅ぼす……!? う、嘘やろ……!?」

 彼の激白にアリーナ全体の空気が凍り付くと、救芽井と矢村は魂を抜かれたかのように口が利けなくなってしまっていた。久水兄妹も、薄々感づいていた様子ではあったが、さすがにこの内容には目を見張っている。
 何の反応も示さず、まるでバッテリー切れでも起こしたかのように動かない瀧上さんが、どこと無く不気味だ……。

「十年前にこの者がここに追放されたことは、当時の総理大臣であった伊葉和雅氏から聞き及んでいた。……いつ暴れ出すかわからない、不発弾のような存在として、政府全体でこの者の存在に蓋をしてしまったことも、な」

「じゃあ、なんで今になって……!」
「言っただろう。救芽井エレクトロニクスのため、だよ」

 R型の四人に道を阻まれながらも、抗議の声を上げる俺に対し、甲侍郎さんは背を向けたまま静かに答える。

「……!」
「このような者を野放しにしていては、救芽井エレクトロニクスの技術力がいつ狙われるか、わかったものではないからな。……話し合いが通じる相手であるという、期待もない。警報装置に引っ掛かった時はどうしたものかと思ったが――どうやら、四郷鮎美氏もこの計画のことについてはお察しだったようだ。そして、警報が解除されていたところを見るに……彼女も協力的らしい」

 その言葉に、瀧上さんを除く全員の視線が審判席の所長さんに注がれた。次いで、瀧上さんの右手が更にわなわなと震え、やがてその手は憎悪を握りつぶすかのような拳の形へと変化していく。

『……出来ることなら、あなた達が来る前に全てを終わらせてしまいたかった。これ以上の血が流れる前に、妹を悲しませる前に。でも、それはもう、叶わない。なら、せめて――』

 ようやく顔を上げた彼女は、疲れ果てた表情で瀧上さんを見遣る。かつて恋い焦がれたヒーローの幻を追い続け……やがて諦めた。彼女の瞳に映る色は、そんな憂いを湛えているようだった。

『――これ以上、罪を重ねる前に……私が愛したあなたのままで、あなたの旅をおしまいにしたい。鮎子と私と、あなた自身のためにも……それが、私の願う全てよ。凱樹』

 精一杯の想いを捧げるように、彼女は声を絞り出していく。だが、当の瀧上さんは鉄兜で表情が見えない上に、さらに身を震わせるばかりで、聞こえているのかいないのかがさっぱりわからない。

 要領を得ないことばかりだが……ここまでの流れで、ひとつだけ判明していることがある。

「まさか――いや、やっぱり……このコンペティションも……!」
「――そう。全ては秘密裏にこの者の現状と、その戦力を測るた
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