第119話 招かれざる客
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無骨な鋼鉄の色に包まれた、瀧上さんの真の姿だった。
姿形こそ、今までとは色しか違わない程度だが……あんなにヒビだらけでも「勲章」として後生大事に身につけていた装甲を破り捨てているところを見れば、彼が「本気」になった事実くらいは一目瞭然だろう。
「な、なな、なんやアレっ!? 赤いの引っぺがして、灰色になりよったっ!?」
「装甲が取れた……! 何をするつもりなの……!?」
「龍太様、お気を付けてッ……!」
瀧上さんの変容を前に、客席もどよめきに包まれる。四郷に至っては、肩を震わせながら両手の指を絡ませていた。まるで、神に祈るかのように。
そんな彼女の肩を抱いている久水も、注意を促すような視線を送っている。――やっぱり、このままじゃ済まないみたいだな。
「……殺してやろう。容赦はせんぞ、悪魔めが……!」
「くッ……!」
呪詛のような言葉を並べながら、瀧上さんがジリジリと迫る。俺は亀裂だらけのマスクの中で、焦燥と恐怖を掻き消すように唇を噛み締めた。
その時。
『――ダメ、来るッ!』
珍しく狼狽した様子の、所長さんの声が響くと同時に。
「そこまでだ瀧上凱樹ッ! 貴様の逃げ場はどこにもない、おとなしく降伏しろッ!」
どこか聞き覚えのある声と共に――エレベーターの中から、白い装甲服を思わせるスーツを纏った集団がなだれ込んできた!
あれは――G型の「救済の龍勇者」!? よく見たら、後方にも何体かのR型が……!
「お父、様……!?」
そして、あの声の主を救芽井が呟いた瞬間。
所長さんの焦りの理由。警報の実体。
その全てに、俺は気づいてしまった。
約十人ほどの「救済の龍勇者」の集団は、瞬く間に客席を飛び越えてアリーナに降り立ち、この試合に乱入する格好となる。
四人のR型は俺の両脇を固めるように立ち、六人のG型は電磁警棒を構え、瀧上さんを一瞬で包囲してしまった。
この間、僅か十秒程度。驚く暇すら与えない程の、計算され尽くした立ち回りだ。
「よくやった……龍太君。後のことは、我々に任せてくれ」
呆気に取られるしかなかった俺に、G型に混じっているあの人が、背中越しに声を掛けた時。
俺は、心の奥で叫ぶことしか出来なかった。
……なんで、なんでッ! こんな時に来ちまったんだよッ……!
――甲侍郎さんッ!
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