暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第119話 招かれざる客
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
は理解に苦しむ」
「……そりゃあ、そうだろうよ。あんたなんかに理解されるような、お子ちゃま的思考回路は……持ち合わせちゃいないんだからなッ……!」
「――そうか。ならばオレも苦しむ必要はない。君を……排除するだけだ」

 煽りを受けた瀧上さんは、今まで以上にドスの効いた低い声色で、静かに俺の抹殺を宣言する。

 どうやら、お子ちゃま扱いを受けたことについて、何か思うところがあったらしい。自分の子供染みた英雄思想に、図星でも喰らったのだろうか。
 感情を押し殺し、その全てを殺意に変えたような眼光。それが今、鉄兜の奥から覗いている。――本気で殺しに掛かろう、って流れだな、こりゃあ。

 あの凄まじい殺気を一身に浴びてるってのに、俺の心は割と落ち着き払っている。恐怖を通り越して、かえって冷静になっている……のかも知れない。
 ……もう、後頭部を直接狙うのは無理だ。でも、あそこ以外に弱点があるとも思えない。

 ――だったら、「突き蹴り以外の手段」であの後頭部を狙うまでだ!

「……どういうつもりだ」
「どうもこうもねぇ。三十六計、逃げるにしかずってなァ!」

 俺は前傾姿勢になり、彼に飛び掛かる――と思わせて、あさっての方向に走り出した。その行動に、彼は更に怒りを押し殺すような声で唸る。
 もちろん、そんな彼を挑発することも欠かさない。彼の周囲を駆け回りつつ、定期的に立ち止まっては、手招きする仕種を見せ付ける。
 この試合が始まった頃を思わせる構図だが……あの時とは、決定的に違うところがある。
 それは――今の俺には、明確な勝算があるってことだ。

「――ふざけたマネをォオォオオッ!」

 そして、この膠着状態も長くは続かなかった。
 程なくして、瀧上さんはけたたましい叫びと共に、全速力で俺を捕まえようと迫って来る! もちろん俺も大人しくやられるつもりはなく、両脚の筋力を酷使させ、全力でその場から退避した。
 だが、俺自身がバテててきていることや、互いの歩幅が体格の関係で掛け離れていることもあり、俺は次第に追いつかれつつあった。
 徐々に視界に広がっていく、黒く巨大な影。僅かでも減速して振り向けば、瞬く間に赤い亀裂だらけの異世界に飲み込まれてしまうだろう。

 だが、俺に焦りはない。これは、俺が待ち望んでいた状況なのだから。

 この体格差において、俺が唯一持っているアドバンテージ。

 それを活かせる瞬間は――今しかないッ!

「……ヒュッ!」
「ムッ!?」

 俺は両脚の踵をブレーキにして、急激に減速し――瀧上さんの懐に入り込む。
 次の瞬間、俺を捕まえようと伸ばされていた彼の右腕を取り――太刀を振り下ろすように、斜めに向けて豪腕を「誘導」した。

羅漢拳(らかんけん)――|
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ