第119話 招かれざる客
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は理解に苦しむ」
「……そりゃあ、そうだろうよ。あんたなんかに理解されるような、お子ちゃま的思考回路は……持ち合わせちゃいないんだからなッ……!」
「――そうか。ならばオレも苦しむ必要はない。君を……排除するだけだ」
煽りを受けた瀧上さんは、今まで以上にドスの効いた低い声色で、静かに俺の抹殺を宣言する。
どうやら、お子ちゃま扱いを受けたことについて、何か思うところがあったらしい。自分の子供染みた英雄思想に、図星でも喰らったのだろうか。
感情を押し殺し、その全てを殺意に変えたような眼光。それが今、鉄兜の奥から覗いている。――本気で殺しに掛かろう、って流れだな、こりゃあ。
あの凄まじい殺気を一身に浴びてるってのに、俺の心は割と落ち着き払っている。恐怖を通り越して、かえって冷静になっている……のかも知れない。
……もう、後頭部を直接狙うのは無理だ。でも、あそこ以外に弱点があるとも思えない。
――だったら、「突き蹴り以外の手段」であの後頭部を狙うまでだ!
「……どういうつもりだ」
「どうもこうもねぇ。三十六計、逃げるにしかずってなァ!」
俺は前傾姿勢になり、彼に飛び掛かる――と思わせて、あさっての方向に走り出した。その行動に、彼は更に怒りを押し殺すような声で唸る。
もちろん、そんな彼を挑発することも欠かさない。彼の周囲を駆け回りつつ、定期的に立ち止まっては、手招きする仕種を見せ付ける。
この試合が始まった頃を思わせる構図だが……あの時とは、決定的に違うところがある。
それは――今の俺には、明確な勝算があるってことだ。
「――ふざけたマネをォオォオオッ!」
そして、この膠着状態も長くは続かなかった。
程なくして、瀧上さんはけたたましい叫びと共に、全速力で俺を捕まえようと迫って来る! もちろん俺も大人しくやられるつもりはなく、両脚の筋力を酷使させ、全力でその場から退避した。
だが、俺自身がバテててきていることや、互いの歩幅が体格の関係で掛け離れていることもあり、俺は次第に追いつかれつつあった。
徐々に視界に広がっていく、黒く巨大な影。僅かでも減速して振り向けば、瞬く間に赤い亀裂だらけの異世界に飲み込まれてしまうだろう。
だが、俺に焦りはない。これは、俺が待ち望んでいた状況なのだから。
この体格差において、俺が唯一持っているアドバンテージ。
それを活かせる瞬間は――今しかないッ!
「……ヒュッ!」
「ムッ!?」
俺は両脚の踵をブレーキにして、急激に減速し――瀧上さんの懐に入り込む。
次の瞬間、俺を捕まえようと伸ばされていた彼の右腕を取り――太刀を振り下ろすように、斜めに向けて豪腕を「誘導」した。
「羅漢拳――|
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