第118話 鉄兜の盲点
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例え樋稟が許そうと……このワガハイが許さぬぞオォッ!」
……生身の人間ならではの、「持ち味」……!?
『――それ以上は試験妨害よ、茂君』
「……わかっております。これ以上、ワガハイに言うことはありません。失礼致しました」
所長さんの諌言に従い、彼が身を引いた瞬間。俺は……気づかされた。
――そうか。そういうことかッ!
恩に着るぜ茂さん、さっきはついで呼ばわりして悪かった!
俺はメリメリと悲鳴を上げ、ひしゃげていくマスクの奥で、僅かに口元を緩める。まだ――終わりじゃない。
力を出し尽くし、疲弊しきっていた腕の筋肉を酷使して、俺は自分の喉元に指先を伸ばす。そこから、徐々にヘッドロックを決められている頭の部分に向けて、人差し指を這わせていく。
確か、この辺りに……あったッ!
――顎の裏にひっそりと存在している、小さなボタン。まさかこんなちっぽけな機能が、最後の希望になるなんて――なッ!
「これで終わ――んぬッ!?」
マスクごと俺の脳みそがブチまけられる勢いで、ヘッドロックの力が強まった瞬間。
トドメの一撃からすっぽ抜けるように――俺の頭とマスクが「分離」したのだ。
そう、これが茂さんの云う「生身の人間であるが故の持ち味」。人体で最も大事な頭を守るためなら、こんな芸当もできるってわけだ!
マスクを外すボタンを押した次の瞬間、ヘッドロックから抜けた角付きマスクが、白い床にカランと落ちる。それと時を同じくして、素顔を晒した状態になった俺は瀧上さんの背後に立つ格好になった。
もちろん、この機を逃しはしない。俺は即座に跳びあがり、
「……らぁあぁあッ!」
彼の首の近くにある、後頭部の急所……「唖門」目掛けて、空中から落下する勢いと、全体重を掛けた振蹴をブチ込んだ。外側から覆い被せるように放つ、空手の蹴りに近しいこの一撃。俺が出せる打撃技の中じゃ、これが一番の威力だ。
――これでも大して効ききやしないのかも知れない。そう思うところもあったけど。頭ではわかっているつもりでいたけれど。試さずには、いられなかった。
「まだ勝負を捨てきれない」。そんな胸中が露呈したかのような、一発だったのだ。
蹴りを終えて着地した後も、なぜか微動だにしない瀧上さん。次に彼が動きを見せたのは、俺がサッとボロボロのマスクを拾って、再装着した時だった。
だが、それは――
「……ぬゥッ、グ、オォォッ……!」
――俺が予想していたものとは、明らかに掛け離れていた。
後頭部を両手で抑えて片膝を着くその姿は、さっきまでどんな攻撃もものともせず、暴威を振るいつづけてきた鉄人とは、似ても似つかない。
これじゃ
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