第118話 鉄兜の盲点
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いかしら』
「なに? ――ムッ!」
ようやく、向こうも俺の存命っぷりに気がついたらしいな。壁に寄り掛かりながら、見苦しくも立ち上がろうとしている俺のアホな格好に、さすがの瀧上さんもビックリの様子。
「……ハッハハハ! ここまで活きのいい子供がいたとはな。シアターTロッソで握手でもしてやりたくなるガッツだ」
「あいにくだが……主賓があんたじゃ客は来ねぇだろうよ。あんたと二人きりのテレビ出演なんぞ御免被る」
だが、驚いている時間はごく僅か。すぐに殺りがいのある獲物を見つけた、と言わんばかりの好戦的なテンションに早変わりだ。俺がしっかりと両の足で立つのも待たないうちに、ジリジリと歩み寄り始める。
「実に結構。オレのやり方に異を唱える悪党共には制裁を加えるのみだ。それは今までも、これからも変わらん」
「……あんたが、それで何の正義を守ってるつもりでいるのかは知らない。だけど、そのためにあんたが守ろうとしてる家族が苦しんでる時もあるって、考えてみたことはないのかよッ……!」
背中をひしゃげた壁に押し付け、両足で自分の身体を押し上げるような要領で、俺はようやく立ち上がった。
あまりにも必死な俺。あまりにも平静な瀧上さん。この違いを見れば、勝負は付いたも同然であると、誰もが信じて疑わないだろう。
そうだとしても。俺はまだ、倒れていい身分ではない。
……一矢も報いないままくたばって、何がアイツのヒーローだ!
「家族はみなオレに追従する。家族は必ずオレを賞賛する。――考えるべきことなど、ない!」
刹那、瀧上さんの歩くペースがみるみる加速し――全力疾走となって突っ込んできた! ……あんなに鈍重そうなナリの癖して、なんて足の速さだッ!
「ッ……!」
左右に振られている巨大な腕は、さながら周りのもの全てを薙ぎ払おうとしているかのようだった。もはや貨物列車ではない。その速さを身につけた――戦車だ!
「ぬぅおらァアァアアッ!」
「くおッ……!」
そして、俺の目に映る世界の全ては、瞬く間に亀裂だらけの赤い景色に飲み込まれてしまう。
世界そのものを衝撃音で打ち砕くかのような、凄まじい雄叫びと共に、俺の顔面に振り下ろされる鉄拳。
あとほんの一秒でも立ち上がるのが遅れていれば、俺は今頃、あの隕石のような一撃にバラバラにされていた。
だが、俺は辛うじて、彼の肩の上を飛び越え、攻撃を回避――
「ヌゥン!」
「がッ……!?」
――したつもりで、いたのだが。
振り下ろした腕を瞬時に曲げ、肩越しに逃げようとした俺の背中に、肘鉄が突き刺さり。
「ぐゥアッ! ……う、あ……!」
気がつけば、俺の身体は彼から遠く離れた場所に墜落し、仰向けに倒れていた。俺の清々しい
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