第117話 瀧上凱樹の猛威
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らは唇を結んで見守っているだけだった矢村が、初めて悲鳴を上げる。
「も、もうええやろッ! このまま続けとったら、龍太、龍太死んでまうっ!」
「おっ……落ち着いて矢村さん! これはあくまでコンペティションなんだから、そんなの……そんな、こと……」
あるわけがない。救芽井は、そう言い切らなかった。
何となく、救芽井達も感づきつつあるのだろう。言葉では隠していても、戦い方による「気迫」のようなものでも出ているのかも知れない。
「……お互い、コンペティションの勝敗以上の何かを懸けている。そのように見えてならないのは――ワガハイだけではあるまい」
「そうざますね、お兄様。――そう、例えるなら……『命』を懸けているかのような……」
「……一煉寺、さん……」
久水兄妹や四郷も、どこか疑わしげな視線をこちらに向けている。一切のごまかしを許さない、その真摯な眼差しは、確実にこの戦いの真実を捉えようとしていた。
「圧倒的に不利でありながらよそ見とは余裕だな。さらなる奇策でもあるのか?」
「くっ……!」
瀧上さんの言葉に、俺は仮面の中で歯を食いしばる。
手首を捻る技は、手首自体が回転するから通用しない。かといって、僅かでもその動作を避けたら、力任せに外される。……腕を攻める技は、封じられたと言っていい。
しかも、通常攻撃――最初のローキックでも、彼は涼しい顔をしていた。確かに戦略的には小手調べでしかなかった攻撃だが、一応力は本気だし、下肢の急所である「風市」は確実に捉えていたはず。
――急所を本気で攻めて、揺るがなかった。その事実には、例えあれ自体が「効けばラッキー」という攻撃に過ぎないのだとしても、来るものがある。
そして、ここまでの太刀合わせから浮かんで来る、一つの可能性。「『新人類の身体』と戦う」事態が想定された時から、俺がずっと懸念していた、最悪の可能性。
それが現実であると証明される瞬間が、黒い波となって押し寄せて来る――そんな感覚が、俺の意識を飲み込もうとしていた。
「ぐっ――ワチャアアァッ!」
その可能性を全てを振り払う。その一心で、俺は叫び――地を蹴って彼の顔面に飛び掛かる。
「あそこ」が「新人類の身体」の唯一の弱点かも知れない。そんな、儚い希望のために。
「とうとう頭がおかしくなったか!?」
それに対し、巨大な鉄拳によるストレートが飛び出して来た。標的だけでなく、その周囲の物全てを吹き飛ばしてしまいそうなこの迫力――真正面から突っ込んで来る貨物列車、という表現がピッタリだ。
「トワァーッ!」
もちろん、そんなオーバーキルパンチをまともに食らうつもりはない。俺は迎撃の拳を跳び箱を跳ぶようにかわし――彼の顔面に蹴りを浴び
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