第116話 願いの叶え人
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向けて、俺は握り拳を掲げながら啖呵を切る。
「……」
「……」
そして、僅かな時間の中で睨み合った末、俺達は同時に踵を返した。
『――お互い、話は終わったようね。それではこれより、第三課目「最低限の自己防衛能力」を開始するわよ。救芽井エレクトロニクス側は、準備を済ませるように』
俺達が一定の距離を取ったところで、所長さんがアナウンスで試験を開始する旨を伝えて来る。話を聞いていたかどうかはわからないが――ある程度の事情は察しているような様子だ。いつになく、声色が真剣なものになっている。
そんな彼女に対して無言のまま頷いてから、俺は「腕輪型着鎧装置」を見遣る。そして今度は、客席からこちらを見守っている皆に視線を移した。――その中でも、救芽井は一際心配そうな表情で俺を見つめているのがわかる。
……泣きそうな顔してるんじゃねえよ、全く。「お前が選んじゃったヒーロー」らしく、カッコ悪くキメてきてやっからさ。
――だからもうちょっとだけ、待っててくれよ。
……確かに、こんなの俺には到底似合わない役回りかも知れない。瀧上さんの言う通り、叶わない願いなのかも知れない。
それでも、俺しかいないなら。「救済の超機龍」が俺しかいないのなら。
嫌でもやってみるしかないじゃないか。意地でも……叶えてやるしか、ないじゃないか。
俺は救芽井に向けてニカッと笑って見せた後、彼女達に背を向けるように、瀧上さんと相対する。
……そして、覚悟を決めた。
――この右手に光る、紅い腕輪を翳すように。あの娘を救う力が欲しいと、願うように。
捻った腰の反動による勢いで、天に向けて手刀を放ち、俺は叫ぶ。
だって、俺は――
「着鎧……甲冑ッ!」
――お前が選んだ正義の味方、「着鎧甲冑ドラッヘンファイヤー」なんだから。
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