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フルメタル・アクションヒーローズ
第116話 願いの叶え人
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鎧甲冑そのものの意義だからな。どんな時でも相手を決して殺めない。それが『着鎧甲冑』にとっての『リアリティ』だ」
「なるほど。子供の割には随分と殊勝な心掛けだな。――だが、フェアではない」
「ああ。だからあんたには、自分の代わりに別の命を懸けてもらう。他人の命を守るのが、ヒーローの務めなんだろ?」

 「新人類の身体」は本来、瀧上さんのため――すなわち戦闘用のシステムとして造られたものであり、救命用として造られた今の四郷の身体は、その隠れ蓑でしかない。
 ならば、向こう側だけでも「殺せる」ルールを覆さなければ、条件を突っぱねることはないかも知れない。
 そこが、狙い目だった。

「オレに他人の命を守るために戦え、というのか……面白い。では、誰の命を懸ければいい?」

 誰かの命に関わるというのに、子供のような無邪気さで「面白い」と言い切る瀧上さん。

「決まってるだろ。――四郷だ」

 そんな「歪な正義の味方」へ向けて、俺は賭けの対象を言い放つ。

「あんたが勝ったなら、俺を殺したって構いやしない。超人同士のドツき合いをやろうってんだ、そういう『事故』もあるさ」
「……」
「――だが、もし俺が勝ったら。その時は、四郷鮎子の命を、俺が貰う。あの娘の全てを、俺のものにする」

 そう。これを認めさせれば、瀧上さん自身が約束を破らない限り、より確実に四郷を守ることができる。向こうの要求をある程度呑んでいる分、彼女を引き入れられる確率を一回り高められる、ということだ。
 確かに俺自身が負うリスクは、言うまでもなくバカでかいものにはなるが――なぁに、「勝てばいい」だけの話だ。

「ほう。君は――鮎子が欲しいのか?」
「ああ欲しいね。超欲しい。今すぐお持ち帰りしたいくらいにな。……あんなにいい娘は、そうそういない」
「そうか……。だが、鮎子はオレの恋人の妹であり、大切な家族だ。そうやすやすと、馬の骨に渡すわけにはいかんな」

 交渉成立にこぎつけるための俺の挑発に対し、瀧上さんは劇的な反応を見せる。
 金属同士が擦れ、軋む音と共に、紅の巨体はズイッとこちらに歩み寄って来たのだ。娘をたぶらかす「悪い虫」に詰め寄る、父親のように。

 ――大切な家族、か。

 その言葉に疑う余地がなかったら、どれだけ彼女は幸せだったのだろう。どれだけ、笑っていられたのだろう。

「いいだろう。オレとしても、やる気を出すには十分な条件だ。――だが、叶わぬ夢は見ない方がいい。傷つき、悲しみ、死んでいくだけだ」
「そんな実現出来なきゃカッコ悪い台詞は――最後の最後まで取っておくもんだぜ!」

 眼前に仁王像の如くそびえ立つ、鋼鉄の腕を組んだ深紅の巨漢。全てを薙ぎ倒さんとする「正義」を象徴しているかのような、その威圧的な体躯に
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