第115話 涙を流せる身体なら
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、受け止めなさい。そして、自分の言葉で伝えるざます。全ては、そこからですわ」
「……う、うん……」
一方、久水は母性溢れる優しげな表情で、四郷の肩を抱いて諭すように語りかける。そんな彼女に対し、四郷は恥ずかしそうにコクン、と小さく頷いた。
「一煉寺、さん……」
「お、おう」
「……ボク、待ってるから。……今度は、嬉しい意味で泣くから。……だから、負けないで、ね……?」
自信のない声で呟くその姿は、やっぱりいつ見ても小動物。何と言いますか、庇護欲に駆られちゃいますなぁ、これは。
「――ああ、行ってくる。……大丈夫だって。俺、絶対お前のこと、諦めないから」
「……ッ!? う、うん……」
どうやら、やっとこさ四郷から了解を得られたらしい。ここまで来れば、後は戦うだけ。……そう、戦うだけだ。
「龍太っ! 女の子にここまで言わしたんやから、絶対に勝たな承知せんけんなっ!」
「龍太君、負けたら今度こそ子作りの刑だからねっ!」
「……? お、おう、任しとけ!」
さっきまで不安がってたり不機嫌になったりしていた救芽井と矢村も、今は素直に応援してくれている。声色に微妙な怒気が混じってる気がするのは気のせい……か?
「――随分と待たせてくれるな? いい加減答えを聞きたいところだが」
すると、痺れを切らしたのか、瀧上さんが低くくぐもった声で唸って来る。腕を組んで悠然と待ち構えるその姿は、さながら勇者の挑戦を待つ大魔王のようだ。
……もっとも、その勇者は悩んだりビビってばかりのヘタレ野郎なんだけどな。
「どうやら、奴もお待ちかねのようだな。ワガハイを打ち倒したその拳の味、奴にも教えてやるがいい」
「おうとも! ――いくぜッ!」
茂さんの言葉に背中を押されるように、俺は再び手すりに足を乗せる。目指すは――瀧上さんの待つ、あの純白の平坦な世界。
見てろよ、四郷。どんな奴の命だって助ける、着鎧甲冑の本懐ってヤツを見せてやる!
俺は手すりに乗った足に全力を込め、アリーナに向けてジャンプ――
「あらっ!?」
――した瞬間、片方の足の甲が手すりに引っ掛かった!?
「あららーっ!?」
そのまま前のめりに転落するように、空中で一回転し……!?
「モゲェーッ!?」
――おケツから戦場に降臨ッ! 戦う前から……死ぬ……ッ!
そしてもんどりうった挙句、尻を天井に向けた格好でピクピクと痙攣している俺に対し――
「カッコ悪ッ!?」
――という矢村様の仁義なきツッコミを頂いてしまった事実は、言うまでもない。
それでも俺は、痛みの余り声も出せず、ただ心の底から叫ぶしかなかった。
……台なしだァッ!
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